匠の蔵~words of meister~の放送

BLANK【創作家具 熊本】 匠:木場祐一さん
2011年05月14日(土)オンエア
創作家具工房「BLANK」を主宰する木場祐一さん。木工には「組手」という板と板を接合する技術があるが、木場さんは32歳という若さながら熟練の職人でも困難だと言われる組手「捻り組」の技術を試行錯誤の末に習得。木のクセを読み、釘や接着剤を使用せずに、様々な創作家具を手加工で製作する。「機械だとどうしても加工がドライになるんですよね。自分にとって機械から出る音というのはノイズでしかなくて、手加工で出る音というのはサウンドなんですよ。そうすると、やはり機械よりもやはり手作業の方が気持ちがこもり、良い商品が出来るんです。自分は常に感覚をニュートラルにして家具を製作していますので、作っている工程でノイズが入ってくると、凄く影響されてしまうのかも知れませんね。それと後は、メーカーさんと僕たち個人工房が太刀打ちする時に、やはり機械力では負けますので、機械で出来ないことをやらないと、中々、差別化できないというところはありますよね」。野球のキャッチャーはミットの綿を抜き、ピッチャーの球を響かせながら捕るという。音は人の気持ちを盛り上げもするが、盛り下げもする。五感のすべてを研ぎ澄まし、そうして自らの仕事に臨む木場さんの工房には、常に心地よい手加工のサウンドが鳴り響いている。「BLANKという屋号は、空白ではなくて余白という意味です。家具を製作する時は、フォルムのラインを追いかけているのではなく、どういう風にここが埋まったら、周りが格好よく残るかなという風な感覚なんですよね。それに気付いた時に、余白なんだと思ったんですよ。そして、自分は、これは椅子です。これはテーブルです。という感じで売るのは嫌いなんですよね。僕がテーブルですって言うと、はじめからテーブルとしかお客さんは思わなくて、例えば踏み台にしてみようという概念がなくなってしまいますよね。でも、本当はお客さんなりに使って貰うのが気持ち良くて、どんなに汚くなろうと、その人らしく使って貰っている時っていうのが、一番、やったぜって思えるんですよ。ですから、できた時には、あくまで余白を残している段階であって、お客さんが商品に自分の色を付け加えて貰いたいということで、BLANKと名付けました」。屋号に込めた想いを家具に託し、押し付けるのではく、最後の仕上げを使う人に預ける木場さん。そんな人の生活に寄り添う木場さんの製作した家具たちは、日々の生活の中でこそ本当の輝きを放つ。「毎回、新しい技術にチャレンジしたいのですが、1日に10何時間も働いて食べていくのがやっとの職種ですので、無理があります。そうすると仕事の中に新しい技術を反映させていくしかないんですよね。ですからプレゼンの時に新しい技法を提案して、あえて逃げ道をなくすようにしています。そういう積み重ねで今までやってきたという感じですね」。そんな木場さんは、常に素材のらしさと自分らしさをコラージュして家具に表現。「自分を表現したい、表現者でありたいと願い、一番、自分を表現できる木工の世界を選びました。バックボーンにあるのはオレオレですね」と笑う。「捻り組ではなく、いつかは木場組と呼ばれる技術を完成させたいですね」。そして、今まで「公言したことを実現できなかったことはない」と語る木場さん。その未来が楽しみな若手創作家具作家である。

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