匠の蔵~words of meister~の放送

長崎ホテル 清風 [ホテル 長崎] 匠:前川敬一さん
2008年05月03日(土)オンエア
長崎・稲佐山の中腹に建ち、1000万ドルの長崎の夜景を一望出来る「長崎ホテル 清風」の総料理長・前川敬一さん。長崎の歴史や文化に育まれた豊かな料理を創作する前川さんは、長き年月に渡り日本の食文化に貢献した事が認められ、先日、「黄綬褒章」を受章したそうだ。「こんな賞を頂きましたが、そもそも料理の世界に入ったきっかけは、私の子供の頃は貧しい時代でしたので、とりあえず食べられるという理由だけでした。それから4年後に地元・長崎の料亭に入り、長崎の食文化の豊かさを知り、本格的に料理人として目覚めたんですよ」。そんな長崎は日本一海岸線が長いという特徴を持ち、豊富な食材の中でも特に魚の種類の幅が広い。「長崎の豊富な食材の中から厳選した食材を集め、地産地消にこだわった料理を作っているのですが、私達は食材を扱うのに農家や漁師の事をあまり知りません。ですから、私は極力、生産者の方に直接お会いして食材の元を見るようにしています。そうする事で料理の想像力も膨らむんですよね」。そんな前川さんは、長崎県第一号マイスターとして、長崎県日本調理師技能士会長の役職を務めるなど、その技術の伝承にも力を注いでいる。「普通は食材を大事にしなさいと教えるけど、私は機材も大事にしろと付け加えています。いくら良い食材があっても道具が良くないと美味しい料理は作れません。ですから、包丁にしても鍋にしても他所に負けない位、ピカピカに磨いています。ですから技術の伝承も大事ですが、精神の伝承も同じくらい大事だと考えています。伝えなければならないと責任を感じています」。そんな前川さんは、これまで数多くのお弟子さんを育て上げ、前川さんのDNAを受け継いだ料理人が九州各地で活躍しているのだが、
自身が修行時代に教わった事とは人間関係だと言う。「ブレーンを作る事はとても大切です。ですから私は人間関係を作りやすい環境も考えています。入社希望の若い料理人には出身地を聞いて、遠方の方だと無条件で『頑張りなさいよ』と入社させます。いくら頑張ろうという気持ちがあっても、近くに逃げる場所があれば誘惑されてしまうんですよね。私の子供も関東で料理人をしているんですが、周りに料理人しかいない環境だと、料理人の世界とのパイプが大きくなっていくんですよね。そして、
そういう人が仕事の紹介をしてくれて、仕事も教えてくれる。自分のオマンマの元になるんですよね」。
没頭出来る環境に自分を置いた時点で、既に成長の半分は成功しているかも知れない。やはり必死になる以上の先生は無い。

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