匠の蔵~words of meister~の放送

茂生窯【陶器 沖縄】 匠:上江洲茂生さん
2012年04月14日(土)オンエア
平成17年に県の工芸師に認定された沖縄を代表する陶工の一人『茂生窯』の上江洲茂生さん。伝統の壺屋焼の流れを汲む素朴で温かみのある陶器を登り窯で焼き続け、『沖縄賞』をはじめ数々の陶芸展での受賞歴を誇る。「私は昭和45年に壺屋焼の伝統的な窯元、仁王窯の小橋川永昌氏のもとへ弟子入りし作陶を始めたのですが、そこが登り窯でしたので、昭和55年に独立した時も自然に登り窯を築きました。現在主流のガス窯と違い、登り窯は安定生産には向いていないのですが、自分の力以上の作品が出来上がることが魅力なんですよ。ですから窯入れの時は、不安ながらも『よろしくお願いします』という気持ちに・・・窯出しの時は、沖縄の言葉で『ゆう生まれとうみ』と言うのですが、『よく生まれてきたね』という気持ちになるんですよね。自分は登り窯のお手伝いさんという想いで作陶しています」。人はイメージしたものの範囲内でしかモノを作る事は出来ないと言うが、その枠を超えようとするならば、やはり自然の力に敬意を払い、自然が生み出す偶然を信じるしかない。そうでないと偶然はやってこないし、そうして生まれた偶然は必然と言える。「人はどうしても形の綺麗な、柄がたくさん描き込まれた作品に目が行きがちですが、私の思う良い作品というのは、シンプルで飽きのこない味のある作品なんですよ」。そんな上江洲さんが焼き上げるイッチン唐草皿に描かれた柄の楽しげで大胆な筆運びは、まさに南国の陶器そのものといった趣がある。「人間、完璧なモノを作ることは絶対にできませんよね。ですから、自分の力を十分ではなく十二分に発揮するという意識を持って作品に向き合っています。十分でしたら良く出きて8割ですが、十二分だと十に近くなるかも知れませんよね。私はそこを目指して毎日毎日、作陶に励んでいます。ですから、窯から出した時に自分の納得する作品は1、2点位しかないのですが、それでも、どこかに欠点を見つけようとしてしまうんですよ。ここがいけないのではないか?ここはこうした方が良かったのではないか?と、もっと上を目指すというのか、結局は満足しないんですよ。満足したら、こだわりを失ってしまったら、モノ作りの世界はそこで終わってしまいますからね。『仕事が仕事を教える』という言葉がありますが、まさにその通りだと思います」。飽くなき追求を続けて40年・・・上江洲さんが費やしてきた時間と、その姿勢には、ただただ頭が下がる。

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