匠の蔵~words of meister~の放送

丸秀醤油【醤油 佐賀】 匠:秀島宣雄
2009年05月30日(土)オンエア
創業1901年、醤油醸造業を100年以上続ける老舗「丸秀醤油」の秀島宣雄さん。戦後の技術開発により現在では3ヶ月で作る事も出来るという醤油だが、この「丸秀醤油」では、伝統の日本醤油の製法を守り、今も天然醸造により約2年もかけて諸味を発酵・熟成させて製造する。「長期熟成することにより、酵母や乳酸菌が活発に働き、バニラ、コーヒー、リンゴ、ブイヨン、バラなど300種類以上の香りの成分が生まれます。良い醤油と言うのは、調理の黒子役として素材の持ち味をうまく引き立たせてくれるのですが、香りの種類が豊富に含まれていないとそれは出来ません。ですからウチでは未だに天然醸造の方式を採用している訳でなんです」。300種類の全てが渾然一体となって香る「丸秀醤油」の醤油は、もちろんどの料理とも相性が良い。「今日の科学技術は、今日の時点での最高レベルでしかありません。スペシャリストではあるのですが、様々な副作用を経験していない為、さらに新しい技術が生まれれば、すべてが否定される可能性もある訳です。しかし、伝統技術というのは、様々な副作用を何度も何度も体験した中から、一番全体として良い作り方が受け継がれているゼネラリストなんですよね。そこにはモノ作りの真理があると信じています」。醤油の伝統を受け継いできた麹職人たちの年月と苦労という重みの前には、どんな理論も軽くなってしまう。そんな伝統から生まれた言葉には、ただ頷くしかない。そして、「丸秀醤油」では、健康志向など、食品には様々なブームがある中で、ある基準があると言う。「私たちの会社は、100年以上続いている訳ですが、これから新たに何かを始める場合、常に“これから100年”と言う基準を持っています。いくらおいしい儲け話があっても、これから100年続けられる仕事かどうかという見極めをしていきながら、これはやる、これはやらないと決めています」。100年単位で守り続けられていく味。そこには醤油本来の魅力と「丸秀醤油」の信念が宿っている。「経営コンサルトの先生から『非効率で最悪の経営のやり方』だと指摘された事もあります。しかし、効率を求めずに天然醸造の醤油を作っているからこそ支持されて、現在でも我が社が存続していると思うんですよね。しかも品質的には優れていると思っていますから。これからも私たちは、そんな誇りと信念を持って、『丸秀醤油』の醤油を皆さんにおすすめしたいと思っています」。

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