匠の蔵~words of meister~の放送

龍神工房 [硯 熊本] 匠:小野寺友吉さん
2008年05月10日(土)オンエア
熊本県は宇土市にある県内で唯一の手作り硯の工房「龍神工房」。この工房の硯師・小野友吉さんが作る硯は、切り出した原石の風合いを生かした模様が、龍の昇る姿に見える事から「龍神硯」と名付けられ、多くの書道家に愛されている。「昭和58年に長崎県の対馬に仕事で赴任した際、硯の作り方を先輩に習った事がきっかけで、定年を迎えてから本格的に硯を作り始めたんです。対馬は、硯石の中でも最高の評価がされている若田石の産地として知られ、『源氏物語』の原作者・紫式部も、この若田石で作られた硯を使っていたと伝えられているんですよ」。そんな若田石で作られた硯は、陸で墨をする時におろし金のような役割を果たす、鋒鋩(ほうぼう)と言う微粒子が細かく整っている為、「幽霊に磨らせろ」と言われる程、力を入れずとも墨おりが良いそうだ。「やはり対馬で、この石に出会った事が大きかったですね。この石に出会わなければ、硯を作ろうと思わなかったでしょうね」。そんな小野寺さんは、「自然の石を相手にする事の魅力は、作ってみないと分からない所にある」と言う。「アンバランスな石の方が面白いんですよね。左右対称ではなく不等辺三角形の中に面白みを見付ける日本庭園と同じような感覚です」。そうやって作られた「龍神硯」は、勿論、一つとして同じ形、模様のものがない。「私は特に模様にこだわっていますので、模様の出ない石はあまり好きではありません。この石は、6500万年位かけて出来た石なんですよ。ですから、一つの模様が出来るだけでも実際は、何年かかっているのか分からない訳ですよね。ですから本当に作らせて頂いてるんです。自分が作ったんじゃないんですよね。やはり石に磨かせて頂いている訳なんですよ」。自然が生み出す模様は、どことして均一、規則性がないからこそ面白い。その面白さが分かり、感じる者にこそ、その魅力を引き出す権利が与えられる。そんな小野寺さんは今ではモノ作りの楽しさを子供達に伝える活動も行っている。「7年間で、200人位には教えてきました。モノ作りの楽しさを教える事は、何事にも一生懸命取り組む事の素晴らしさを教える事につながると思うんですよね」。

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