匠の蔵~words of meister~の放送

小川凧店 [長崎 凧] 匠:小川暁博さん
2007年05月05日(土)オンエア
子供の頃、夢中になった凧揚げ。長崎では、その凧の事をハタと呼び、凧と凧の糸を絡ませて、糸を切った方が、相手の凧を奪えるという喧嘩凧としても有名だ。手作り一筋で長崎の伝統的な凧を作る店「小川凧店」の小川暁博さんは、およそ30年前、東京でのサラリーマン生活を捨てて、家業である凧作りを受け継いだそうだ。「最初は全く食えんかった」と、昼は外で働き、夜にコツコツと凧を制作していた小川さんは、その時代から公民館で凧教室を開き、今でも年間何千人もの子供達に凧の魅力を伝えている。「親父がやって来た凧を、とにかく継いで行こうと約束したんだから、絶対に守るという気持ちがありました。5年かかろうが10年かかろうが、そんな簡単にやめれるもんじゃないですよね」。そんな小川さんは、親父さんから口うるさく言われた言葉がある。「何でもそうですけど、何でもすぐは出来んと…良い凧を作る為には、数を削れと。だから結局、指にまでタコを作ってですね、やってる訳です。これがすぐには出来んのですよ、これが何十年とやって来た姿なんです。指にこんなタコが出来て」。そう言う小川さんの指には、凧作りの歴史が刻まれた大きなタコがあった。「数をこなして、それを積み重ねねいとキチンとした仕事は残っていかないんです。慌てたらイカン、長いじゃないですか人生は。慌てるから、色々、あせって失敗して間違えるんです。それでショックを受けるけど、受けなくていいんです。誰でも失敗を繰り返して来てるんですから。凧だけに限らず、失敗せんと成功はせんもんねえ」。何度も積み重ねてきた苦労は、たった1回の成功で、すべて喜びに変わる。「苦労なんて、そんなもんですよ。」と豪快に笑う小川さんは、最後にこんな話をしてくれた。「凧揚げをやってる所は、平和な所が多いですよね。アフガンでも停戦協定が結ばれた時に、子供達が凧揚げをしてたんです」。そう言いながら小川さんは、長崎の街が見下ろせる丘の上で凧を揚げて見せてくれた。

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