匠の蔵~words of meister~の放送

萬力屋【工芸品 大分】 匠:岡本秀昭さん
2011年05月28日(土)オンエア
土塀と石垣の調和がとれた風情ある石畳の坂道に、別府湾を見下ろす杵築城の勇姿が美しい城下町・杵築市で、明治10年から、檜曲輪(ひのきまげわ)と呼ばれる蒸篭(せいろ)や篩(ふるい)など、昔ながらの生活に根付いた工芸品を製作する老舗工房「萬力屋」の4代目、岡本秀昭さん。小学生の頃から父親の後姿を見ながら、その目で技術を盗み、現在は自らの後姿で5代目を継ぐ息子、浩明さんに技術を伝える。「門前の小僧、習わぬ経を読む...ではありませんが、幼い頃から父親の後姿を見て育ちましたので、自然に技術を覚えました。工芸の技術は口で言って伝わるものではありません。自分でやってみて覚えるものですからね」。そんな岡本さんの職人気質な姿勢から生み出される商品は、地元のみならず、日本全国の多くの顧客たちに支持されている。「買って貰った商品を30年後でも修理ができる店でありたいと願い、代々、受け継がれてきた工芸の技術に磨きをかけています。ウチで使う蒸篭は先々代が作ったモノですが、それを私が修理して今でも使っていますからね。お客さんが蒸篭などを張替えできますかと持って来られた時は、これは親父が作ったモノ、爺さんが作ったモノと分かるのですが、そういうウチの商品を長い間使ってくれていることが、この仕事の中で一番嬉しいことです」。そうして岡本さんは、網を張替え、カンナをかけて新品同様にして、蒸篭をお客さんの手に戻す。たくさんの新しい商品を売るよりも、一つの商品を長く使えってもらうことに喜びを見出し、商売抜きに後世まで残る商品製作に励む岡本さんの職人としての姿勢は、杵築城を中心に、南北の高台に武家屋敷があり、その谷間に商人の町が挟まれているという、江戸時代の情景が今も残る杵築の風景に良く似合う。「人に使って貰い、おかしかったと言われないように、生真面目に、キチンとした商品を作る。ただそれだけです」。

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