熊本唯一の馬肉料理専門店として、最高級の肉質を誇る馬肉で客をもてなす「馬料理専門　天國」の女将・前田さつきさん。昭和５７年の創業以来、夫婦で店を切り盛りし、現在は東京に支店を出す程に育て上げた前田さんだが、その人気の秘密は夫婦の気さくな人柄と、馬の部位で最も高級な三枚バラのごく一部からとれる、極上のトロ馬刺しなどを贅沢に使用した料理にある。「馬肉の仕入れには、必ずマスターが行っています。３０年近くも長くやっていますと、普通でしたら業者の方に持ってきてくれとか、他の人間をとりにやるとかするでしょ。でもマスターの場合は、自分の目で見ないと駄目なんです。自分の目で見て良い馬肉しか仕入れない。創業以来、それは徹底的にこだわっています」。見れば分かると言い切るのは、企業秘密なのか、それとも言葉には出来ない感覚なのか。赤身の色、輝き、サシの入り具合、分量など、まさに数十年かけて旨い肉を見抜けるようになったからこそ、言える言葉だろう。「いつも良い馬肉を出し続けること...それが店の信用に繋がりますからね。熊本には馬肉を提供する店が数多くありますが、馬肉の目利きには日本一の自信を持っています」。そんな「天國」は、定番の馬刺しの他、ステーキ、しゃぶしゃぶ、にぎりなど馬肉メニューのみで勝負する。「馬肉メニューのみで勝負する理由は、シンプルに馬肉が一番美味しいと思っているからです。自分が自信を持って出せるメニューしか出したくないですからね。ウチは馬汁にしろ何にしろ本当に美味しいモノを良い材料で手作りしていますから、そんなに種類を出せないんですよ」。自らが責任を持てる自信があるモノだけを出す。その誠実な姿勢も「天國」が全国のファンから愛され続けている理由である。

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