匠の蔵~words of meister~の放送

機織職人 平俊一 [機織職人 鹿児島] 匠:平俊一さん
2008年05月17日(土)オンエア
鹿児島は奄美大島の伝統的な着物・大島紬の機織職人で、伝統工芸士にも認定されたその道50年の大ベテラン、平俊一さん。細い糸を何千本も紡ぎ合わせて生まれる大島紬の生地からは、「体中の神経が一つになる位、集中しないと出来ない」という平さんの言葉に嘘偽りの無い事が分かる。そんな平さんは、一反で108から160までの亀甲模様を織るのが普通の中、216という細かい模様を織る事が出来る唯一の技術者としても知られている。「大島紬は軽くて、冬は暖かく夏は涼しい、とても日本の気候にあった着物なんです。しかもアイロン要らずで、ハンガーにかけているだけでシワがとれます。でも、今は着物の時代ではなくなったので、大島紬を取り巻く現状は厳しいですね」。しかし平さんは、この現状をただ嘆いているだけではない。「結局、大島紬も何でも、人が作らないもの、時代の先端を行くものが売れるんです。人は『売れなくなった売れなくなった』と言うけど、それなら自分で研究する事が大切です」。そんな平さんは、今でも雑誌やテレビを見ている時、その内容よりも服のデザインばかりに目がいってしまうそうだ。「研究して作ってみて受けが良ければ、それを実行に移せばいいんです。大島紬は伝統ある着物ですけど、少し考えないと。同じものばかりでは売れなくて当たり前だと思います。ですから私もまだまだ勉強しています。自分が最高という事はないですよ。76歳になった今でも上には上がいるという気持ちを持って仕事をしています」。50年以上やってもまだまだ…。一つ完成したら、さらにその上をいく最先端のものを追い求める。そんな平さんの旅は一生終わる事はないんだろう。

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