昔ながらの昭和の風情溢れる街並みが魅力の大分は日田市の豆田町。この場所で、地元原産の檜、欅、日田杉などを使った伝統ある日田漆器を製造する「相澤漆芸工房」の相澤秀一さん。木材の産地である日田で、新たな産業を生み出そうと、明治の終わり頃に誕生したこの日田漆器だが、戦後は合成の漆器に押され、現在、日田漆器を、製造しているのは相澤さんだけになってしまったそうだ。相澤さんは、その日田漆器の伝統を守る唯一の存在としての、こだわりを教えてくれた。「漆の絵っていうのは綺麗な線が必要なんですよね。蒔絵を入れる時は、その綺麗な線を描くことに特に注意をしています。同じ一本の線を引くにしても綺麗な線とそうでないものがあるんですよね。それで出来るだけ自分の納得いけるよな綺麗な線を引きたいと思っています」。相澤さんには見えるその違いは、私たちの目にも見えるものなのか尋ねた。「違いは、あんまり分からないでしょうけど、何かそういう事にこだわってモノをね、作りたいと思ってます」。線一本だと、素人目にはその違いは分からないかも知れない。でも、そんな線が何本も描かれ、一つの作品が生まれた時に分かる。そんな小さなこだわりの積み重ねが、やがて大きな違いを生む事を匠の作品が物語っていた。
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