匠の蔵~words of meister~の放送

ムツかけ師 岡本忠好【ムツゴロウ 佐賀】 匠:岡本忠好さん
2011年06月04日(土)オンエア
神業とまで言われる有明海の伝統漁法「ムツかけ」の技を受け継ぐムツかけ師、岡本忠好さん。杉の一枚板の潟スキーに乗り、糸の先に6本カギの針のついた約5メートルの竿を自在に操りながらムツゴロウを引っ掛けて獲るムツかけ漁。岡本さんは、そんなムツかけ師としての活動と平行し、「ガタリンピック」でお馴染みの「道の駅 鹿島」で勤務しながら、ムツかけ漁を干潟を取り巻く文化として、後世に残す為の活動も行っている。「幼い頃に遊んだ有明海の干潟が大好きなんです。平成7年に地元に戻ってきたのですが、ムツゴロウ漁は商売として厳しい時代となり、現在は60歳代から70歳代のムツかけ師が5〜6人しかいないような状況で、技の担い手としては私が一番若手という有様なんですよね。ですから、有明海の干潟の文化を守る為にも干潟体験事業の一環として、ガタリンピックの他にムツかけ漁の体験教室など様々なイベントを仕掛けています」。そんな岡本さんは1回の漁で約700匹のムツゴロウを収獲。技の伝承者として「ムツカケ名人」に認定されている。「名人だった祖父の技を見よう見真似で盗み、糸の先につけたゴルフボールをペットボトルに当てる練習などを繰り返しながら技を磨いてきました。今ではムツゴロウが置物に見えるくらい百発百中となりましたね」。そんな岡本さんは、親しみと感謝を込めてムツゴロウをさん付けで呼ぶ。「ムツかけ漁の醍醐味は、かけて楽しく、逃がして楽しいというところでしょうか。ですから、一度失敗したら、二度と同じムツゴロウさんを引っ掛けようと思いません。サヨナラというか参りましたという形ですね。やはりムツゴロウさんも命がかかっていますからね。自分とムツゴロウさんの一対一の駆け引きの中で、引っ掛けられなかったというのは自分のミスですから、そうすると参りましたと言うしかありませんよね」。全盛期にはボールの縫い目が見えたという長島監督のように、その道を極めた者にしか足を踏み込めないゾーンというのは確かにある。しかし、人とムツゴロウの真剣勝負、その対決姿勢は興味深いものだった。「ムツゴロウさんは一般的に蒲焼や甘露煮で食べられていますが、唐揚にするなど新しい料理法も開発しています。故郷に錦を飾るのではなく、故郷を錦にする。そんな想いで、これからも干潟の文化を多くの人に伝えていこうと思います。それが干潟で育てられた潟っ子の使命だと思っています」。

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