匠の蔵~words of meister~の放送

ながさわ結納店【水引細工職人 福岡】 匠:長澤宏昭さん
2009年06月13日(土)オンエア
紅白、金銀など無数の水引を巧みに結び、鶴や亀、松竹梅など色鮮やかで独創的なめでたい意匠を制作する「ながさわ結納店」の水引細工職人・長澤宏昭さん。流派内で伝統技術を受け継ぐのが当たり前の世界で、長澤さんは独学で水引細工を学んだ稀有な存在であり、宝船や風水水引など自らが考案した意匠の特許を数多く持つ。「若い時は努力せんとつまらんよって、よく言っていましたね。やはり楽して儲ける事は出来ないし、楽して良い事は考えつきません。一生懸命、その仕事に没頭しているからこそ、新しいアイディアが生まれて来るんだと思います」。30歳で脱サラし、最初は既製品を真似ながら腕を磨いていったという長澤さん。もともと手先が器用だった為、技術的な事を覚えるのは早かったが、商売的に成功するには時間がかかったと言う。「一つのモノを作る時、ここに葉っぱを付けるともっと良くなるのだけど、値段が決まっているから付けられない。そんな時、私の場合は葉っぱを付けるんですよね。自己満足かも知れないですが、例え儲けが減ろうとも自分の納得したものを提供したい、見て貰いたいという気持ちの方が強いんですよね。黄綬褒章を貰うほどの鬘職人だった父からも『そげん儲からん商売やめっしまえ』って怒られた事があります。しかし、それを辛抱してずっとやって来たからこそ、信用を得て大きくなっていったと思っています」。儲けようと思わず仕事をすると信用を得て大きくなった。まさに“急がば回れ”とはこの事だろう。そんな長澤さんが作る水引細工は、人と人を結ぶ日本の古き良き伝統として親しまれてきたが、現在は正月飾りも結納飾りも求める人が少なくなってきたそうだ。「水引細工の世界も変わってきて安い外国製の水引を使う職人が多くなりました。しかし、自分は高くても国産の水引で細工を作り続けています。何故なら水引細工というのは、外国のものではなく日本の伝統文化だからです。水引細工がよく使われる結納儀式も日本人独自の婚約儀式です。古いと言われるかも知れませんが、そこだけは譲れません」。安くて良い外国製品が増えてきた事は事実だろう。しかし、外国製品でいい部分と、こればかりは違うと思う部分が、日本人には確かにある。古き良き日本の伝統…そこを大事にしたい気持ちはとっておきたいモノである。

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