福岡県内一のニンニク生産量を誇る農園『松尾農園』の代表、松尾高生さん。3年間のサラリーマン生活を経て、29歳で父親の農園の代表に就任。以来、父親の代で始めたニンニクの栽培を受け継ぎ、安心・安全な栽培技術を徹底的に追求。そのニンニクで作ったドレッシングも人気を博している。「ニンニクの産地は青森県のイメージが強いのですが、ここ八女市と同じ緯度にある中国・上海市嘉定区にもニンニクの産地があり、自分たちは、そこで栽培されている八片ニンニクを作ろうと考えました。八片ニンニクはニンニクの原種に近く、量販されているニンニクに比べると、小ぶりながらも濃厚な味と強い香りが特徴で、ニンニク本来の成分もたっぷりと含まれているんです」。しかし、その美味しさの秘密は、ニンニクの種類にあるだけではない。「ここ八女市を中心とした土地は、全国的にも珍しく、ニンニクと米の植え付けの時期がベストのタイミングでやってくるので、二毛作が実現出来る土地柄なんですよね。水田がニンニクの大敵となる土壌の害虫を防ぎ、稲刈り後のワラを堆肥肥料にすることで、ニンニク栽培に適した土壌が出来上がります。ですから、松尾農園の二毛作には、一切、農薬が使われていません」。4ヘクタールの広大な土地で、ニンニクの収穫後には、ニンニクの葉、茎、割れたニンニク片を土に混ぜ込み、肥沃な土壌を作る松尾さん。その手法は農業を志す若者たちからも注目を集め、平均年齢31歳という若い力が、現在、松尾農園を支えているという。「若い人の発想や感覚に気付かされることもたくさんあります。ですからウチは全員で集まって行うミーティングに力を入れているんですよね。また、これまでの農業は、背中を見て学べという形が多かったのですが、僕はそれを出来る限り言葉でも伝えることが大切だと思うんですよね。そうすることで、仕事を1週間で覚えていた人が、2日で覚えられるようになれば、次のステップに早く進むことができますよね。そして、その状況を全員で共有できるようになれば、仕事がもっと楽しくなると思うんですよ。ですから今は、経験者だけが出来る農業ではなく、新しい人が直ぐに出来る農業を目指し、その仕組みを含めて、壁にブチ当たりながら毎日汗を流しています」。経験でしか得られない感覚は大切だが、それを言葉でサポートすることもできるはず。そう信じ、新しい発想で農業の未来を切り開こうとする『松尾農園』が掲げるキャッチコピーは、『百姓が地球を救う』。「今はまだ微力ですが、食べる人と生産の現場を繋ぎながら、農業で出来る社会貢献のあり方を真剣に考えていこうと思います」。
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