匠の蔵~words of meister~の放送

天文館 むじゃき【白熊 鹿児島】 匠:久保節子さん
2010年06月19日(土)オンエア
鹿児島県民のソウルフードとも言える「白熊」を生み出した老舗甘味処「天文館 むじゃき」の久保節子さん。昭和24年に、擦りおろしたカキ氷の表面が「白熊」の毛並みに見えたことから、その名を付けて販売。以来、鹿児島ではカキ氷のことを「白熊」と呼ぶようになり、今では多くの店で、様々な「白熊」を食べることが出来る。「今や白熊は、鹿児島県の食文化となっていますので、それを『むじゃき』のモノですと言いたくはありません。白熊=カキ氷と思われるようになったのは、『むじゃき』だけでは無理ですからね。多くの人がそれぞれの白熊を食べて、白熊、白熊と言うようになったことにより、逆に今の『むじゃき』があると思っています」。そんな「むじゃき」の「白熊」は、職人技で削られるフワっとした雪氷に秘伝の自家製シロップがほどよく絡み合い、色鮮やかなフルーツが氷の表面を涼しげに彩っている。「一番のこだわりは、一子相伝の味付けのシロップですよね。なんとも言えず美味しいですよ。そして、そのシロップは甘すぎると喉が渇きますが、私たちは絶対に水を飲ませない甘さというのにこだわっています。それと、やはり氷ですよね。氷を擦る音で、雪のように擦れるか擦れないかを判断しています。ダ〜という音ではなく、サ〜という音ですよね。そういう音で擦った氷は、食べた時に舌に何も残りません」。優れた料理人は音で調理するというが、久保さんも同じように氷を擦る音で、「白熊」の仕上がりを見極めている。今でも手作りされる「むじゃき」の「白熊」は、そんな人の五感が美味しく仕上げていた。「普通のカキ氷ですと冬は、やらないですよね。でも『むじゃき』では1年中、この白熊を提供しています。それは、正月などに県外から故郷に戻ってきたお客さんが、白熊を求めて来て下さるからなんですよね。ですから寒い正月が忙しいんですよ。そして、『懐かしい』と言って下さる。この白熊は、ブーム的なお菓子ではなく、ここ鹿児島に根付いたお菓子ですから、流行は追いません。80代のおじいちゃんが、普通に食べて、『これが白熊だよ』」って言って下さるのが、一番だと思っていますからね。それは昔から変わっていませんね」。ただ「懐かしい」だけでは、本当に何十年に1回食べるだけで十分...。久保さんはあえて言わなかったが、懐かしいと同時に、やっぱり「美味い」と言わせることが出来るからこそ、毎年、故郷に戻ってきた人が、「むじゃき」の「白熊」の味を求める。

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