匠の蔵~words of meister~の放送

亀崎染工有限会社【老舗染物店 鹿児島】 匠:亀崎昌大さん
2014年03月01日(土)オンエア
鹿児島の伝統工芸品である『大漁旗』や『五月幟』をはじめ、『法被』や『暖簾』など、あらゆる染物製品を製作する老舗染物店『亀崎染工有限会社』の五代目、亀崎昌大さん。『亀崎染工』は『武者幟』において、鹿児島県で唯一、独自の柄をもっているなど、代々伝承されている質の高い技法と、その時々を反映させた優れた意匠が県内外で評価されている。
「亀崎染工は明治2年に熊本で創業し、明治40年に現在の串木野(いちき串木野市)に移転してきました。創業以来、特に鹿児島県の伝統工芸品である『大漁旗』と『五月幟』は手作業にこだわり、いまも熟練した職人の手によって染め上げています」。現在はプリント技術やインクの品質なども向上し、染工の世界も御多分に洩れず機械化が進んでいるそうだが、その『武者幟』に代表される勇壮な柄や文字の迫力。さらに幟に奥行きを与える微妙なボカシなどは、やはり職人の手によってしか生まれないという。
「伝統工芸品は文化がないと育たない。また残っていかない分野であります。やはり受け継がれてきた職人の技術という文化をなくして、ただパソコンが出来ればとか、ただデザインが出来れば何でも出来るということになれば、その伝統工芸品自体が廃れていくのではないかと思うんですよね。いまは海外からも安価な『五月幟』がやって来ます。『武者幟』がやって来ます。しかし、日本古来の固有の伝統文化である『節句の幟』は、やはり日本人の手で、日本人の技術で残していきたいじゃないですか。そこに区切りをつけておかないと、本当にどんどん機械化が進んでいってしまいますので、頑なに、理由云々ではなく技術は残していこうと。私たちは商品を売るのではなく、技術を売るのが仕事ですからね」。何でも合理化すればいい訳というではない。技術だけでなく、機械には決して込めることのできない、職人の気持ちや想いまでも大事にする亀崎さんの言葉には、伝統文化を担う者としての気概が溢れていた。
「私は決して機械を否定している訳ではありません。機械だとコストを減らすことが出来るなど、メリットもあります。ですから、どちらかを否定するのではなく、良いところ悪いところをちゃんと分かった上で、機械をいち道具として使う分には全然いいと思うんですよ。しかし、子どもの立身出世を願って作る『五月幟』や、進水のお祝いに作る『大漁旗』に関していえば、やはりそこは、すべてを手作業でいきたいという想いはありますよね」。それは人の喜びに寄り添うモノだから。亀崎さんは、そんな想いで、日々、仕事に向き合っているという。
「仕事をする上で心がけているのは、とにかく笑うことです。私たちの仕事はお祝い事のお手伝いですから、やはり気分よく仕上げたのと、気分が落ち込んで仕上げたのとでは、出来上がった商品に差が出てくると思うんですよ。お客様に喜んで頂けるように、気分よく持って帰って頂けるように、我々も気分よく仕事をすれば、仕事も丁寧になり、色もきれいに染まると思いますからね」。将来は桜島の火山灰で色を染めるなど、地元の素材で色を出したいという亀崎さん。飽くなき探求心をもって、これからも歩み続ける亀崎さんの座右の銘は、『やってダメなら、もっとやれ』だった。
(※亀崎の「崎」はたつさき)

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