佐賀の小京都と呼ばれる小城町の名産品、小城羊羹の元祖として知られる老舗和菓子店「村岡総本舗」の大家幸弘さん。外側が砂糖でシャリっと硬くなる食感と上品な甘さが魅力の「小城羊羹」。小城町では明治初期から羊羹作りが始まり、今でも28軒もの和菓子屋が軒を連ねているが、「村岡総本舗」では、「材料に勝る技術なし」を信念に、創業以来、素材から製法まで妥協のない和菓子作りを続けている。「村岡総本舗では、白小豆やいんげん豆からとれた白餡を天然着色料で染めた紅煉りが特徴で、これは、小城が300年の昔から桜の名所であることに由来します。小豆が不作だった平成6年は、紅煉羊羹などに使われる白小豆などの高級な小豆が高騰し、作っても利益が出ないという状態でしたが、辛抱して使い続けた結果、お客様の信用を頂いたと思っています」。そんな「村岡総本舗」では、技術の面でも「手間がかかっても美味しいものを」という考えで、味を変えてしまうような効率のみを求めた作業の変更は認めていないと言う。「羊羹というのは派手さはありませんが、分かる人には分かる味だと思います。昔ながらの製法が美味しいから守り続ける。本当の美味しいものを求め続けるのは困難な時代になりましたが、それが大事だと肝に銘じて、これからも羊羹を作り続けていこうと思っています」。その季節、環境で性質を変え、生き物と言われる羊羹作りは、煉り10年といわれるほど経験がものをいう世界。「村岡総本舗」では熟練の職人が、その味を守り続けているという。「奇をてらうのではなく、本物の味を提供し、これからは若い人にも小城羊羹を食べてもらいたいですね」。そんな「村岡総本舗」では、サービスの面でも独自の考えを取り入れている。「村岡総本舗では全商品の試食をして頂いています。それは味に自信があるということと、自由に食べて選んで頂きたいという想いからです。また、私どもは店員ではなく販売員であれということを徹底しています。店員というのは商品を受け渡しするだけですが、販売員というのはお客様に色々とアドバイスさせて頂く存在として、商品を説明できなければいけません。そうして試食して頂き、コミュニケーションをとりながら、お客様には納得して商品を選んで頂きたいと思っています」。美味しい商品を作るプロであるのと同様に、その商品の魅力を伝えるプロであれ。「村岡総本舗」が提供するのは、食べれば分かるの先にあるサービス。人を笑顔にする...楽しい気持ちにさせてくれる「村岡総本舗」の小城羊羹の魅力は、そうして多くの人に伝えられ受け継がれている。
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