匠の蔵~words of meister~の放送

ふるさと料理 杉の子 [老舗郷土料理店 宮崎] 匠:森松平さん
2008年03月01日(土)オンエア
宮崎を代表する郷土料理店として、観光客だけではなく、多くの地元の人間にも愛されている「ふるさと料理 杉の子」の店主・森松平さん。鹿児島県枕崎市出身ながら、昭和45年に奥さんの地元である宮崎に郷土料理店を構え、これまで宮崎の料理・食材に関する書籍を多数執筆している。「食の原点は、地元でとれた旬のものを、その土地に伝わる料理法で調理し、食するという事です。私はそれを土産土法と呼んでいるのですが、宮崎でお店を開くのなら、宮崎の事を勉強するのは当たり前です」。そんな森さんの料理は、勿論、調味料以外、宮崎産の食材が使われ、宮崎で生まれた料理法で調理されているのだが、そのレパートリーも幅広い。「今は鶏の炭火焼きもやっていますが、その内チキン南蛮も始めるかも知れません。料理というのは、こちらが押し付けるものではなくて、お客さんの要望に応える事が大事だと思うんです。人の趣味・嗜好は時代と共に変わります。ならば料理も変わらなければいけないと思うんです。ただし、ゆるぎないモノもあります。変えるモノと変えないモノを一貫して守るという事が大事なんです。私だけのこだわりでは、家族と従業員の生活を守る事が出来ませんからね」。そんな森さんは、自らを郷土料理というカテゴリーで語る事を嫌う。「本当は『ふるさと料理 杉の子』ではなく、『日本料理 杉の子』としたいんです。そうすると家族から『お父さん客が逃げるから、それだけは止めてくれ』と言われるんですが、それ位、私は日本料理の料理人だと思っています。何故なら、私は日本各地にある家庭料理の集大成が、その土地の郷土料理であり、その郷土料理の集大成が日本料理だと思うからなんです。例えば、京都の料理屋さんが、京懐石茶懐石宮中料理と呼ぶものの集合体が、京料理という地方料理で、その地方料理の集合体が日本料理なんです。ですから私は、日本料理人として、とにかく自らを知る努力を続けています。自分が立っているこの宮崎の事を知る。南九州の事を知る。地理も歴史も文化も。そこで、どういう暮らしをして来たのかという事を知る。そうすれば、ちゃんとお客様が喜ぶ料理を作れると思っています」。郷土を愛し、郷土料理に真剣に向き合ったからこそ、少し引いて日本料理全体を眺めることが出来る。そうして、日本料理の土台を支えている郷土料理に改めて目が行き届く。そんな森さんの作るふるさと料理だからこそ、観光客だけではなく、多くの地元の人に信頼・信用されているのだろう。

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