江戸時代に薩摩藩主、島津斉彬公のお声がかりで生まれ、今や鹿児島を代表する和菓子として知られる「かるかん」。原材料は、天然の自然薯、米粉、砂糖のみという、真っ白でシンプルながらも深い味わいのある蒸し菓子だ。その鹿児島で、天然の素材にこだわり、140年以上も伝統の味を守り続けている「かるかん」の老舗「明石屋」の取締役統括、岩田英明さんは、その伝統への想いを話してくれた。「伝統へのプレッシャーは特にないですが、常にお客様に信頼心のあるものを作るという事だけですね。長い歴史の中で、やはり変えていいモノと、変えてはいけないモノがあるものですから。シンプルな素材、原材料に対しての こだわりは変えちゃあいけないと思いますし。一方では、米は改良されて昔に比べて、ずっと美味しくなっていますよね。そういった素材は、見つけながら取り込むという事です」。そこに止まる事が伝統を守る事ではない。「明石屋」の伝統とは、より最良の「かるかん」を求める姿勢こそが伝統なんだろう。「かるかんは、全国のお客様からのご注文が昔から非常に多いものですから、やはり私共の会社は鹿児島を愛する方々に守られているなと、薩摩が好きな人が多いんだなという事を感じるんですよね。ですから今後は、この薩摩というものをキーワードに、もう少し深く掘り下げて行きたいなと思っています。おこがましいですけど、薩摩菓子を通して鹿児島の文化を作る一端を担っていければな〜というように考えています」。長く愛されているモノには、愛される理由がある。愛してくれる人への感謝の気持ちと、その期待に応えたいという想い。江戸時代から愛され続ける明石屋の「かるかん」には、そんな熱い心が受け継がれていた。「蒸し菓子であるかるかんは、やはり蒸し立てが1番美味しいんです。だからかるかんを流通菓子には、したくないんですよね。いかに新鮮なかるかんを食べて頂けるか。それを考えていきたいと思っています」。
| 前のページ |