長崎に水揚げされた新鮮なエソ、グチ、イワシなどの魚を主原料に、大正14年から「長崎竹輪」の製造を続ける老舗竹輪専門店「宮嶋竹輪」の宮嶋利信さん。「プリプリとした食感と魚の旨味を刺身感覚で味わえる長崎竹輪は、かつて漁師の妻たちが余った魚を新鮮なうちに加工したのが始まりと言われています。海に囲まれた長崎は加工に適した魚が多く、昔は長崎市内だけでも27社もの専門店がありました」。その専門店も現在では3社のみとなってしまったそうだが、それでも「長崎竹輪」は、日々の食卓を彩る便利な食材であるのみならず、おせち料理などの祝いの席にも欠かせない高級食材として、いまなお多くの人々に親しまれている。そんな「宮嶋竹輪」の会社の屋上には、巨大竹輪が鎮座。そして、ショーケースには、黄金色に輝く竹輪が並ぶ。「長崎竹輪の特徴は、私たちは山吹色と言っていますが、この黄金色に輝く焼き色にあります。それとチリメンジワと呼ばれるシワにあります。これが揃っていないと長崎竹輪とは呼ばれないんですよね」。「宮嶋竹輪」では、炭火で焼いていた昔ながらの製法にこだわり、炭火と同じ800〜1000度の高温でじっくりと竹輪を焼き上げ、この山吹色とチリメンジワを実現。また、材料も、砂糖、味醂に頼らず、極力水延ばしをせず、昔ながらの竹輪作りに取り組んでいる。「良い竹輪は、カステラと同じでフワ〜としています。カステラと並ぶ長崎を代表する味として、味のみではなく、食感や焼き色までこだわり、やはり長崎竹輪は美味しいと、多くの人に言われ続けたいですからね」。新鮮な魚が手に入る長崎では、竹輪に余計なモノを足してはならない。足した時点で長崎の竹輪ではなくなり、それは竹輪の焼き色にも表れる。長崎の竹輪であるがために、頑なに昔ながらの製法で勝負する宮嶋竹輪の竹輪は、もちろん、鮮やかな山吹色をした、これぞ長崎と思わせるモノだった。
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