匠の蔵~words of meister~の放送

網焼きステーキ いたや【老舗洋食店 大分】 匠:渡邉正勝さん
2009年06月27日(土)オンエア
大分市内の中心部にある創業40年の老舗洋食店「網焼きステーキ いたや」の主人・渡邉正勝さん。モダンな落ち着いた店内のオープンキッチンで、76歳となる今も料理の腕を振るい、世代を超えた多くの人たちの舌を楽しませている。そんな「いたや」は、本来は本格的なステーキ店だが、町の洋食屋さんとしての顔も併せ持ち、昔の流儀のまま愚直に20日間以上もかけて作られる、自家製ドミグラスソースを使ったハヤシライスが一番人気だという。「長年、この店を愛し続けて下さるお客さんを裏切る事は出来ませんから、デミグラスソースはインスタントを一切使わずに作っています。毎日火を入れて、2日に1度は漉すので、旅行にも出かけられないんですよね」。現在は定休日の水曜日に休んでいるという渡邉さんだが、開店以来、長年、定休日を作らずに無休で働いてきたせいか、「休んだ方がだるい」と笑う。「私は常に努力しようと思っています。いい加減なことをしていたら、お客さんに申し訳ありませんからね。今でも朝は私が店の鍵を開けて、夜は私が店の鍵を閉めて帰ります」。かつて厳しい師匠の元で、他の弟子がすぐに辞めていく中、誰よりも長く働いたという、まさに努力の人である渡邉さん、その長年の努力の上に積み上げられた味には、どんな才能も敵わない。「私はお客さんに料理を持って行った時、最初のひと口、ふた口をよく見ます。美味しい時は、そのひと口、ふた口で、必ず表情に表れますからね。何年続けていようとも、やはりお客さんの反応は気になるものなんです。もちろん料理を残された時も気になりますが、どうして残されたのかと聞くと、ほぼ『お腹一杯』という理由です…」。76歳となった今でも、黙々と自らの責任を果たし、それに見合う評価を勝ち得た渡邉さん。もはや渡邉さんが勝てないものは一つしかないのかも知れない。それは「お腹一杯」という事だ。「お客さんに来て頂ける間は、ただ一生懸命やるだけです。他は何も考えていません」。そんな渡邉さんの作るドミグラスソースのコクは深く…味わい深かった。

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