匠の蔵~words of meister~の放送

工房M【ジュエリー陶器 福岡】 匠:松尾まさこさん
2013年05月25日(土)オンエア
陶芸、染織、プリザーブドフラワーなど、多彩な分野で才能を発揮する『工房M』の松尾まさこさん。閑静な住宅街にある工房で、様々な作品を創作する傍ら、教室も主宰。多くの女性たちの生活に潤いを与えている。「高校教師から陶芸家へと転身した父の傍らで、5歳から陶芸に親しむようになったのですが、柔道家として全日本3位の実力をもつ父は厳格な性格で、その教育方法はスパルタそのものでした。でも、10歳で大人と交じり初めて賞を獲得し、この時、努力をする楽しみを知ったんですよね」。以来、松尾さんは、『努力は天才に勝る』という父の教えを胸に、好奇心旺盛に創作活動を展開。近年は陶器にジュエリーを一粒一粒埋め込んだ世界初の作品『ジュエリー陶器』を開発することに成功する。「40歳くらいで初めて赤ちゃんを授かったのですが、早期で流産してしまいました。それから半年、心も体もボロボロな状態の時に、街を歩いていたらキラキラと輝くスワロフスキーに目を奪われ、その輝きが暗闇で見つけた希望の光のように思えたんですよね。そうして、陶芸家として大きな痛みを抱えた人々を癒せる作品を作りたいと思い、ジュエリー陶器を作るようになりました」。その売上金の一部は、「世界の子どもたちに役立てて欲しい」と、毎年、『ユニセフ』に募金されているという。「宝石はそれぞれ融点が違うので、最適な温度を見つけるまでは、ターコイズは白い灰となり、スワロフスキーとエメラルドは溶けるなど失敗の連続でした。でも、そうして『ジュエリー陶器』を作る過程で、既に自分自身が癒されていたんですよね」。だからこそ松尾さんの作品は、どの作品も人の心を癒す、元気にするエネルギーに溢れている。「作家は父のように強烈に自分の自我をもち、力でねじ伏せて、自分の表現したい形にするタイプと、私のように土の中に入り込むというのか、土のなりたい形に手を添えるタイプの2種類に分かれると思います。私の作品を見て、みなさんが『癒される』と言ってくださるのは、その作品から『頑張らなくてもいいなだよ』というメッセージを受け取ってくださるからだと思うんですよね。土がなりたいと思う方向に手を添えると、すごく優しくてナチュラルな感じに仕上がりますから、私の作品に無理はないんですよ。作品というのはその人そのモノですので、すべて出るんですね。『書は人なり』といいますが、陶芸の世界も同じなんですよね。私がそのまま作品になったというモノを作っていきたいな〜と思っていますので」。その穏やかな人柄や作風とは裏腹に、空手の達人であるなど硬派な一面ももつ松尾さん。その多面的な魅力は多くの人の心を癒し、惹きつけていた。「世の中、やって無駄なことは一つもないんですよね。『万芸は一芸を生ず=多芸は一芸を深める』というように、何か壁に当たった時に、色々なことをやっていることで応用力が育まれるなど、逆に一つの根っこを深くしていくことにもなるんですよね。ですから、それぞれの分野が繋がっていて、そのすべてが松尾まさこという人間なんです」。それは、すべての分野に真剣に取り組んでいるからこそ輝きを放つ言葉。人生のすべての時間を創作活動に捧げる松尾さんの作品には、そんな松尾さんの生き方までもが表現されていた。「私は最後に死ぬ時にですね、自分の人生が最高の作品だったと感じて死にたいんですよ。ですから生き方が一番大事だと思うんですよね。どんな作品を作ったのかというのは、その過程で生まれてくるモノであって、やはりどんどん好奇心が趣くままに色んなことを学んで、枝葉を伸ばしていきたいなと思います。そうすると、その木陰で癒されてくださる方もたくさん出てくると思うし、そういう人になれたら幸せだな〜と思いますね」。

| 前のページ |


| 前のページ |