匠の蔵~words of meister~の放送

梅木商店【あくまき 鹿児島】 匠:梅木康博さん
2011年07月09日(土)オンエア
鹿児島の銘菓「あくまき」を製造販売する老舗「梅木商店」の3代目、梅木康博さん。蒟蒻を固める木灰汁に餅米を漬け込み、それを竹の皮に包んで蒸しあげ、白砂糖や黄粉などをまぶして食べる「あくまき」は、奈良時代に中国から伝来した「粽子(ちまき)」が鹿児島(薩摩)において、同じく中国から伝わった孟宗竹を用い、独特な形に変形した餅菓子。薩摩においては戦陣食として活用され、文禄・慶長の時代から西南戦争に至るまで、西郷隆盛などの薩摩藩士が食し、現在でも鹿児島の食文化として色濃く残っているという。「戦陣食という背景から、鹿児島では主に端午の節句に食べられていたのですが、今は1年を通じて食べられています。鹿児島の家庭料理ですので、それぞれの家庭の味があるんですよね」。「梅木商店」では、昔ながらの「あくまき」の味を電子技法と言う特殊な方法で再現。その味は、地元のみならず日本全国の鹿児島県出身者に愛されている。「電子技法というのは、あくまきの原材料を昔の原始的な素材に戻そうという考え方なんですよね。工場内の壁と床を炭素(すみ)で覆い、あくまきの材料となる水と餅米にもマイナスイオンを加え、環境ホルモン物質などの危険な物質を取り除いています」。マイナスイオンは一時、家電製品や森林浴ブームで注目されたように人の身体に良い作用があるとされているが、梅木さんはこの作用に約25年前に注目し、商品製造に取り入れたと言う。「森林浴をしながら働いているのと同じようなことですから、従業員が皆、明るく朗らかで疲れにくいなどの作用もあるんですよ。しかし、何よりも安全で、昔ながらの自然に近い味を提供できるということが一番ですよね」。よく昔ながらのなんて言うと何も手を加えていない商品ように思われるが、「梅木商店」のあくまきは、決してそんな単純なモノではない。一見、アンバランスにも思われる最先端の技術をもって、西郷隆盛も愛した伝統ある薩摩の味を今に伝える梅木さん。その味が鹿児島県人の郷愁を誘う理由は、老舗の名の上にあぐらをかかず、常に進化し続ける梅木さんのアグレッシブな姿勢にあった。

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