世界遺産に認定される豊かな自然に魅せられて、移住してくる人が多いという鹿児島県・屋久島。ここ屋久島にある、屋久島焼の窯元「新八野窯」の主人・吉利博行さんも、30数年前に東京からこの場所に移住し、「新八野窯」を作り上げたそうだ。「焼物ってね、窯が必要じゃないですか。窯は大きなモノだし動かせない…。だから、まず自分の生きる場所を作らないと焼物っていう仕事は出来ないんですよね。都会は都会で刺激があって魅力的ですが、屋久島は、自然はもちろん人も魅力的なんです。」。そうして屋久島での生活を選んだ吉利さんだが、決して観光気分で移住した訳ではない。「厳しい自然環境の島に住んでいる人は強いんですよ。そういう姿を見ていると癒されている暇はないんですよね」。そんな吉利さんの作品は、屋久島の海で採取した珊瑚を使い、海のブルーのように美しい光沢を出すのが特徴だ。そして、その作品には、吉利さんの生き方が反映している。「私は自分から何か切り開いて生きて行くっていうよりも、出会った縁みたいなモノ、そこを大事にして生きてきた気がしますね。屋久島のこの場所があったから、今の焼物があると考える方なんですよね。自然を受け入れて、日々の中で足元見ながら土を触ってく…そういう仕事ですから」。その場所に住むことで作風が決まり、暮らしが決まり、人生が決まる。その土地と向き合い、その土地に生かした作品を形にして行く。そうやって月日をかけて、人生をかけて作られた作品は、説明するまでもなく、ゆるぎないものだった。そして、そんな匠の座右の銘は「一期一会」だった。
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