匠の蔵~words of meister~の放送

田舎庵 [福岡 うなぎ] 匠:代表取締役 緒方弘さん
2005年05月28日(土)オンエア
美味い鰻と言えば、誰に聞いても養殖鰻より天然鰻だと言うだろう。しかし福岡の小倉で唯一の鰻料理専門店「田舎庵」の社長・緒方弘さんは、「天然鰻が沢山いた30年前は、形が揃っている養殖鰻の方が形が不揃いの天然鰻より値段が高かったんです。」と言う興味深い話をしてくれた。しかし昔は天然の池で養殖される鰻が多かったが、時代と共に安定しているハウスで養殖される鰻が増えて来た為に味が落ちてしまい、今のような常識が出来上がったそうだ。そして養殖の鰻も、どこの池で誰に育てられたかによって随分味が違うそうだ。「良い鰻の条件で一番肝心な所は、誰が育てるかなんです。鰻にエサをやる時に、優れた人は鰻を見てエサをあげるか、あげないかを決めるんです。感受性の少ない人は毎日あげてしまいます。鰻は食べたくないのにエサをあげてはいけないんです。だから誰が育てるかなんです。そういう条件を満たしてやっと良い鰻が出来るんです。」何においても、感受性が高くなければ、デリケートな仕事やクリエイティブな仕事を成し遂げる事は難しい。鰻を育てるのも人を育てるのも、味や物を上手く作るのも感受性なのかも知れない。そして緒方さんは、「勿論、一番良い天然の鰻と1番良い養殖の鰻を比べれば、天然の鰻の方が美味い」と認めている。しかし「天然崇拝は危険なんです。」と警鐘を鳴らす。「天然だからと言って必ず良い鰻だとは限りません。そして天然の鰻が少なくなっている現在、安定して良い鰻をお客様に提供する為には、日本全国から優れた人が育てた良い鰻を仕入れる事も必要です。」と語る。しかし決して天然鰻を諦めている訳ではない。緒方さんは豊前海産の天然鰻も仕入れている。天然でも養殖でも良いモノは良い。そんな緒方さんのお店からは、今日も鰻の良い香りが漂って来る。

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