匠の蔵~words of meister~の放送

FUKU+RE【スィーツ 鹿児島】 匠:新保美香さん
2015年07月11日(土)オンエア
鹿児島の郷土菓子『ふくれ菓子』を現代風にアレンジしたスィーツブランド『FUKU+RE(フクレ)』の代表、新保美香さん。『ふくれ菓子』とは小麦粉と砂糖と重曹を混ぜた生地を、蒸篭などでふっくらと蒸し上げた蒸し菓子で、鹿児島にはそれぞれの地域に、それぞれの味があるという。
「私も子どもの頃からよく『ふくれ菓子』を食べていましたね。鹿児島では誰もが知る三角形の懐かしい味のおやつで、ひと昔前までは、どの家庭でもお母さんやお婆ちゃんが手作りしていたんですよ」。新保さんは大学入学を機に鹿児島を離れ、卒業後は3年弱、フランスのパリで料理研究家に師事しながら料理雑誌の編集やスタイリングの仕事などに従事。帰国後はパリでの経験を生かし、東京でフードコーディネーターとして、メーカーの調味料を使った新しい料理を提案する仕事などに携わってきたそうだが、その中で『ふくれ菓子』をアレンジするというアイディアに辿り着いたという。
「商品開発の考え方の一つに、あるモノにアレンジを加えて新しいモノを生み出すというのがあるんですよ。何も常にゼロからではないんですよね。『ふくれ菓子』は水分が多く、バリエーションが作りやすいお菓子ですから、様々な素材を合わせることで、新しい『ふくれ菓子』を生むことができると思ったんです」。そうして新保さんは鹿児島に戻り、トカラ列島に自生する島バナナや喜界島の黒糖など、地元の素材を合わせた新しい『ふくれ菓子』を開発。伝統的な製法や魅力はそのままに、より多くの人が親しめるように、『ふくれ菓子』をお洒落な姿に進化させることにも成功する。
「よくロールケーキと間違われるんですが、このような姿に『ふくれ菓子』をアレンジさせたのは、お婆ちゃんが家庭で手作りしていた昔ながらの『ふくれ菓子』の良さを、再度、見直して欲しいという目的があるからなんです。でも、そのままの姿だと若い世代に見過ごされてしまいますよね。そこをフランス菓子のような今風の姿にアレンジすることで興味を持ってもらえるんじゃないかな〜と。それから『そういえば昔、小っちゃい時にお婆ちゃん家で食べたな』とか、『じゃあ私もお婆ちゃんから作り方を聞いて、自分の子どもに作ってみようかな』とかね。そういうきっかけになればイイな〜と思っているんですよ。『ふくれ菓子』のように何世代にも渡って食べ続けられることって、凄いことだと思うんですけど、地元の身近な食材ととても相性が良かったり、家事の合間に簡単に作ることができたり、それにはそれなりの理由があるんですよね。今はコンビニやスーパーで、手軽にお菓子を買うことができるので、お家でなかなかお菓子を作るお母さんも少ないかも知れないんですけど、そういう家族のことを想っておやつを手作りしてきた鹿児島の食文化を、次世代に継承していきたいな〜と思うようになってきたんですよね」。そんな新保さんは無農薬、低農薬の厳選したオーガニック素材を使い、添加物や化学調味料を一切使用せずに『ふくれ菓子』を製造。それは子どもに安心、安全なモノを食べさせたいと思う母親の気持ちそのものだった。
「ここ鹿児島には素晴らしい食材を生産している農家がたくさんあるんですよ。でも皆さんは、それに付加価値を付けることが苦手なんですよね。微力ながらも私たちがこうして、そんな食材に付加価値を付けて販売することで、農家の方も素晴らしい食材を生産し続けることができればな〜と思っています」。地元の良い食材に付加価値を付けることで客が喜び、生産者も良い食材を作り続けることができる。そして鹿児島の食文化も継承することができる。そんなプラスのサイクルで回るスィーツブランドを立ち上げた新保さんの想いは、『福がリピートするように』と名付けられた『FUKU+RE』の屋号にも表れていた。
「昔読んだ本の中にあった言葉なんですが『人生は自分の思った方向へ動く』というのが大好きなんですよ。何事もやれないんじゃなくて、やらないだけなんじゃないかと。始めから無理だと思ったら無理ですからね。やれると思う気持ちを大事に、これからも食を通じて鹿児島の魅力を全国に発信し続けていこうと思っています」。

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