平成21年に創業40周年を迎えた博多を代表する老舗焼肉店「大東園」の専務取締役・徐道源さん。地元の自然と気候に恵まれ、良質かつ安全な飼料で育てられた九州の黒毛和牛にこだわり、仕入れる肉は必ず試食し、少しでも納得できなければ仕入れない…と徹底的に素材への真摯な姿勢を貫く。「
食べ物を提供する焼肉店として、何よりお客様に『まずい』と言われるのが一番堪えます。情けなくて、その夜は寝込んでしまう程です。ですからサービスも大事ですが、まずは、『まずい』と言われないように美味しいものを追求する。その順番をハッキリとさせておかないと、可もなく不可もない“まあまあ”なモノが出来上がり、お客様が離れていくと思っています」。そんな徐さんのこだわりは、「大東園」が仕入れる肉の原価率にも表れていると言う。「提供する値段に対して、食材の仕入値はこの位、人件費はこの位、諸経費はこの位と、飲食業界の中では、それぞれの原価率はかなり科学的に分析されています。しかし、そのセオリー通りに食材を仕入れると、どうしても面白くありません。ですから私は、まず良い食材を仕入れる事に力を注いでいます。そして、従業員には迷惑をかけていますが、残った原価で、人件費や諸経費などを考えるようにしています」。現在は祇園にも支店を持ち、上川端にある本店と合わせて300席以上が、連日満席になるという「大東園」。しかし、その人気の秘密は、そんな徐さんの肉へのこだわりだけではない。「私は焼肉は大衆料理だと思っています。家が焼肉店でしたので、子供の頃からずっと見ているのですが、本当にいつでも簡単に満足出来る大衆料理なんですよ。ですから、ひょっとしたら5千円前後までなら許して貰えるのではないかと思い、その枠を超えないような金額を設定しています。今、大東園のお客様一人あたりの平均単価は5千円前後なんですよね。特別な人だけが召し上がれる店というのは絶対にしたくないんです。ですから、これからも5千円の中で頑張ってみようと思っています」。これにこだわったから...これに何日間かけたから...そんな作り手のこだわりだけで、値段が上がっていくのではなく、普通の人が行ける店であり続けるための値段にも、同じようにこだわる。そんな徐さんの姿勢からは、何よりも焼肉という料理への愛情が感じられた。「とにかく合理的なモノとか機械的なモノというのは、どうも少し味が抜けるような気がするんです。同じ道でも、もし2通りの道があるのなら、少ししんどい道を歩く方が成功の近道かな〜という気がします。一生懸命汗流して、お客様に幸せを感じて頂けると、その幸せを分けて貰えますからね」。
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