西都市の旬の野菜や地元の果物でアイスを製造する『もりのふうアイス』の代表、安藤みゆきさん。西都原古墳群の“森”と、そこに吹く“風”をイメージして、屋号を“もりのふう”と名づけ、規格外や余って捨てられそうになっている農作物を積極的に活用し、手間暇をかけて客も農作物の生産者も笑顔にするアイスを手作りしているという。
「元々、私は会社員だったんですが、実家が営むスーパーで余った野菜で何か作れないかな〜と思って、アイスクリーム屋さんを立ち上げたんですよね。それは本格的なアイスではないのかも知れないけど、アイディアで捨てられていくモノを役立つモノに変えられたら素敵だな〜と。ですから私のアイスは食材ありきのモノなんですよね」。元々、スーパーの近所に子どもたちが集まる池があり、そこに自転車にアイスキャンディーを積んで売りに行っていたという安藤さん。その後、独学でアイスの勉強を重ね、やっと納得できるアイスが作れるように。その店頭には東米良特産のゆずをふんだんに使った『ゆずアイス』や西都市の名産品であるピーマンを原料にした『完熟ピーマンのアイス』など、ユニークなアイスが並び、日々、多くの人々が買い求めていく。
「ピーマンって子どもたちから嫌われてるけど、形を変えてあげることで驚いてくれる。それが楽しみなんですよね。嫌われたままではピーマンが可哀想じゃないですか」。そのアイスは口に含むと、まさにピーマンそのものの味がするが、決して子どもたちが嫌がる類のモノではなく、食べ進めると味が変わり不思議な余韻を口の中に残す。
「苦味やエグ味なども様々なモノと合わせると不思議に合うんですよ。いま西都市はマンゴーも有名ですが、やっぱりピーマンの生産者が多いんですよね。そのピーマンにマンゴーやゆずなどをバランスよく配合すると、ピーマンの味はしっかりと残ってるのに、本当に食べやすくて美味しくなるんですよ」。主に規格外の食材を扱うことから、通常のアイス作りより何倍も手間暇がかかる安藤さんのアイス。それでも今の製法や素材にこだわるやり方を変える気はないという。
「今は時代が早いじゃないですか。時間を短くすることが美徳のように言われる時代ですが、それでは何か味が出ないような気がするんですよね。余韻が残らないというのか。人が手をかけて作っていく、そういう手間暇が、やっぱり食べた後にホッとできる余韻に繋がるんじゃないかな〜と思うんですよね。テキパキがすべてではないっていうか。もちろん普通のモノを使えば早く作れるけど、何でも時間をかけたモノって美味しいんですよね。ピーマンも普通、緑色をしていますけど、時間をかけて完熟させると赤くなって美味しくなるんですよ。甘さが出てくるんですよね。ですからよく私のやり方は『合理的じゃない』なんて言われるんですが、時間をかけた分だけ味わいが出てくるので、それでイイと私は思っています」。アイスはお年寄りから子どもまで誰でも食べられて笑顔にしてくれると、自らも微笑む安藤さん。そのアイスは、ただ時間をかけているから味のある、人がホッとする余韻を生んでいる訳ではなく、時間をかけることで込められたアイスを食べて笑顔になって欲しいと願う安藤さんの想いが生んでいた。
「余った食材とか、捨てられそうな食材に想いをかけてアイスを作っている訳ですけど、結局は巡り巡って、お客さんから笑顔をもらって、自分も幸せをもらってるんじゃないかな〜ていう風に思います。自分がどういったモノに癒されるのかっていったら、やっぱり人が手をかけたモノ。時間をかけて想いを込めたモノに癒されますからね」。そんな安藤さんの座右の銘は『情けは人の為ならす』という言葉。まさに自分の為に一つひとつ時間をかけて手作りされる安藤さんのアイスは、地元、西都市の人々を笑顔にさせる力を持っていた。
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