匠の蔵~words of meister~の放送

明るい農村【竹炭 熊本】 匠:末廣勝也さん
2011年07月23日(土)オンエア
高品質の竹炭製品や竹酢液を製造・販売する工房「明るい農村」の代表、末廣勝也さん。炭焼き職人の父の跡を継ぎ、子どもの頃から竹炭の生産に携わるが、昭和32年に一時中断。その後、平成8年に菊地市で再開し、以降、九州竹炭生産振興会の会長を歴任するなど、資源的にも環境的にも優しい竹炭の普及活動にも尽力する。「竹炭を再開したのは、放置竹林の問題で多くの人が困っているという話を聞いてからですね。しかも、竹炭の場合は竹の成長が早い為、原材料の確保に困ることがありません。そんな資源的にも環境的にも優しい竹炭の技術を、このまま放っておく手はないと考えた訳です」。そうして末廣さんは、時には海外まで足を運び、持てる技術のすべてをボランティアで伝授。多くの人々の生活を豊かにしている。「これまで、中国やミャンマー、ネパールなどで竹炭の技術を広めてきましたが、そのような土地では、子どもたちが資源的に乏しい木材を求めて、毎日2時間も歩き回っているんですよね。しかし、竹炭の場合だと近くにたくさん自生していますので、そんな努力も必要なくなります。また、竹炭は木炭の何十倍も消臭力があり、生産する過程で生まれる竹酢液は、菌を死滅させる効果が期待できるなど万能な力を持っていますからね。竹炭の技術によって子どもたちが幸せになる、笑顔になる瞬間が嬉しくて、このような普及活動をしています」。そんな末廣さんは、教を乞う者を拒むことがない。「竹炭の技術を秘密にする方が多い中、何故、そんなに簡単に教えるのとか、自分の首を絞めるのと同じじゃないのって、よく言われます。ですが私は、それは違うと言うんですよね。皆さん困っているのですから、助けてあげるのが当たり前だと思うんですよ。竹炭を焼くことは本当にイイことですからね」。竹炭の力を信じ、シンプルに「イイことだから」と教える末廣さん。その何一つ打算のない行動は、今、日本に必要とされている人への優しさそのものだった。「ただ、教えたからといって、その知識がすぐに通用する訳ではありません。やはり、そこには経験が必要となります。煙を見ながら、匂いを感じながら、そして、気温、湿度を見ながら焼く温度を調節する。そのような技術は、やはり自分自身でやってみないと身につかないモノですからね」。現在は後継者を募集中しながら、新たな竹炭商品の開発にも力を注ぐ末廣さん。その姿は、まさに「森の番人」と呼ばれるに相応しいモノだった。「旧態依然とした竹炭を焼き続けるのだけは嫌なんです。今日より明日、明日より明後日と、現状に満足せずに歩み続ける。それが技術者だと思います」。

| 前のページ |


| 前のページ |