大分の人気温泉地、湯布院の名旅館の台所を支える「江藤農園」の江藤雄三さん。「亀の井別荘」「玉の湯」「草庵秋桜」などの食事で出される野菜は、すべて「江藤農園」の江藤雄三さんの手によって作られた野菜だそうだ。そんな江藤さんは、午前中は各旅館を回り、午後から畑仕事に精を出すという。湯布院の旅館の食事が好評な訳は、江藤さんのその仕事のスタイルにあった。「午前中は仕事が潰れますんで、手間がかかりますよね。でも、それをやらないと、野菜の使われ方とかが、分かんないですしね。例えば、水菜一つでもサラダに使うのか、おひたしに使うのかっていうのが分かってないと、良い野菜が作れませんからね。結局、自分の目で見るのが一番早いんですよ。ファックスで貰ってやれば済む事ですけど、顔見て話して、怒られて、色んな事を言われてやっていくのが1番です。顔見て話さないと表情も分かんないし、我慢されてりゃ困るし、こっちも、我慢するんじゃなくて言っていきたいし」。商売の基本は対面商売だと言う。あえて手間をかけて、その基本を貫く江藤さんは、「要は本当に信頼関係ですね。」と言う。お客さんの意見や要望を聞き、満足される野菜を作る…。いわば野菜のオーダーメイドを、難しい自然を相手に行う江藤さんは、お客さんと自然と両方の表情を見極める湯布院の匠だった。
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