匠の蔵~words of meister~の放送

フェニックス [調理師 鹿児島] 匠:寺地貴子さん
2008年07月19日(土)オンエア
鹿児島市内の「サンロイヤルホテル」13階にある、桜島を一望するレストラン「フェニックス」の調理師・寺地貴子さん。40名が所属する「サンロイヤルホテル」の洋食部で、唯一の女性調理師として働く寺地さんは、今年2月、全国およそ2万人の新人西洋料理人が挑む「トック・ドール料理コンテスト」で、九州からは初めての優勝者となる。「小さい頃から料理が大好きで、高校卒業後、大阪の調理師専門学校に進学しました。そこで体験した西洋料理の新しい味覚に感動し、この道を歩み始めたんですよ」。そんな寺地さんは、専門学校卒業後、大阪では大人数に埋もれてしまうと、地元のイタリアン・レストランに就職する。「そこで経験した3年間は、とても貴重なものだったのですが、さらに成長したくて、大都市へ出ようと考えていたんです。そんな時に出会ったのが、『サンロイヤルホテル』の総料理長の料理でした。その料理は一皿一皿、味、バランス、演出まで全てが完璧でした」。地元に自分の求めていた料理がある事を知り、それから程なく寺地さんは「サンロイヤルホテル」に就職する事になる。「総料理長には、当たり前を当たり前に持続する事が大切だと言う事を学びました。料理が美味しいのは当たり前なのですが、それを作業的な気持ちで作るのではなく、お客様に提供しているという気持ちで作らないと、コゲているのに気付かないで出してしまうようなミスが出てくるんです。そんなミスを完全に無くした状態で、常に料理を作り続けるのが自分のこだわりですね。仕上げて満足するのではなく、お客様のことまで考えて満足する事が大切だと思います」。賞を取る事は難しいが、それを毎日の仕事に落とし込む事、地味な作業の中で創意工夫の心が負けてしまわぬようにいる事、それも同じか、それ以上に難しい。「料理コンクールから帰ってきてからですが、凄く疲れが溜まり体調を崩してしまったんですよね。その時に、総料理長から『プロだったら風邪をひいていようが、疲れていようが同じモノをお客様にちゃんと出さないといけない』と怒られました。お客様は私の都合で料理を食べに来て下さる訳ではないですからね」。そんな寺地さんは、この調理師をという仕事を一生の仕事として、これからも続けていくと言う。「女性調理師の先輩がいないという状況の中、三十代になると、勝手に調理師は難しいと考えていました。でも、今は料理から離れた自分が想像出来ないんです。将来は、鹿児島の料理を子供達に伝えるような仕事もしていきたいですね」。寺地さんが伝えたいのは、味ではなく食べている人の事を想って作る料理。そして、そんな寺地さんの料理には、常に今現在の精一杯が込められている。

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