鹿児島にある「鹿北製油」の和田久輝さんは、胡麻・菜種・椿など、かたくなに国産の原料にこだわり油を搾っている。そして、世界で唯一、黒胡麻から油を搾る技術を開発した人物だ。そんな素晴らしい技術を開発したのにも関わらず、「鹿北製油」の油は、今も鹿児島の山間の小さな一画で作られている。「胡麻というのは、やはり国産の方が甘いんです。ですから、国産の農家が10倍も20倍も増えるのでしたら、会社を大きくしても良いかなって思うんですけど、国産の農家が少ないからって安易に外国産の胡麻を使い、メーカーだけ大きくしてもしょうがないじゃないですか。」そう語る和田さんは、未だに明治5年に作られた石臼を使い、「タマシメ」と言う、昔ながらの手法で油を搾っている。その為、何も足さない生の油が出来るそうだ。しかし、大手のメーカーが、1日3000トンから5000トンも油を作っている中で、1日800キログラムしか作れない、この手法で油を搾るという事は、大手メーカーとの価格競争について行く事が出来ず、多くのハンディキャップを背負う事を意味する。「最初の12年間は売れませんでした。しかし、興味を持ってくれる人はいました。そうして少しずつお客さんが増えて、原料を栽培してくれる農家も増えました。そういう消費者の方や農家の方々に支えられて、今があります」。あくまで料理の中の一調味料である胡麻油。しかも、栽培しているのでもなく、あくまで油を搾るという作業にこだわりを持つっている。一つは小さな胡麻粒だが、そのこだわりが、大きな味の違いを生む。
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