姶良市の伝統工芸や芸能を伝承する「北山伝承館」を拠点に、手漉き和紙工房「さつま和紙 WAGAMI工房」を主宰する小迫田昭人さん。小迫田さんは、自らが製作する和紙を「さつま和紙」と命名。屋久杉を細かく砕いたチップや孟宗竹の皮など、鹿児島ならではの素材で和紙を漉く。「鹿児島の素材で和紙を漉くと、県外で展覧会を行なった場合、説明しやすいというのはありますよね。しかし、それよりも私の和紙で鹿児島を紹介することができれば嬉しいことですからね」。サラリーマン時代に紙漉きの魅力にとりつかれ、木と紙の文化ともいえる日本文化の根源に携わる仕事である、紙漉き職人に転職したという小迫田さん。現在は、和紙が柔らかな間接光を生むランプやタペストリーなど、和紙の概念に捉われない独特の世界観を持つ様々な和紙製品を製作。和紙の温もりが感じられるその作品は海外でも高い評価を受けている。「和紙を漉き始めてから20年になりますが、作る過程で思いもよらない様々な形に変化しますので、飽きることがありません。新しい発見に毎回、感動することが出来ますよ」。そんな小迫田さんは、毎年、夏休みに約200人もの子どもたちに、和紙漉き体験を通してモノ作りの楽しさを教えている。「子どもたちはモノ作りの天才ですね。大人は枠にハメられた社会で生活していますので、アレは駄目、コレはしてはいけないというような先入観が邪魔をして、子どもたちのように枠をハミ出したモノを作ることが出来ないんですよね。例えば、紙にシワが寄ると、大人は失敗だと考えるのですが、子どもたちは、さらにシワを寄せて面白い雰囲気の和紙にしてしまうんですよね。出来上がるモノに任せるというか、そういった発想は、子どもたちから学ばせてもらいましたね」。大人は勝手に枠を作って、何事も窮屈に考えてしまいがちだが、なんでも出来ないことを考えるよりも、出来ることを考えて取り組んだ方がイイに決まっている。そんな自由な発想を子どもだけの特権にしておくのは、やはりもったいない。「念ずれば通ずるという言葉が好きなのですが、突拍子のないことでも考え続ければモノになるんですよね。そういう想いで作ったモノというのは、一つの想いが作品に入り込みますので、私は、僕はそれでイイのかな〜という風に思っています」。
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