匠の蔵~words of meister~の放送

琉球料理 ふみや【琉球料理店 沖縄】 匠:仲本文子さん
2010年08月07日(土)オンエア
沖縄の郷土料理“フーチバージューシー”を考案した「琉球料理 ふみや」の女将・仲本文子さん。 “フーチバーは蓬”で、“ジューシーは混ぜもの”と言う意味。即ち“フーチバージューシー”は、“蓬の炊き込みご飯”という意味になるのだが、ただ蓬が入っているだけではなく、細かく刻んだ豚肉も一緒に炊き込まれ、蓬の独特の香りと豚肉の旨味が食欲をそそる。「私がフーチバージューシーを考案したのは昭和40年頃のことです。当時、営んでいた麻雀店のお客さんに食通の方が多く、『蓬を入れたボロボロジューシー(雑炊のような混ぜご飯)を作ってくれ』と頼まれ、少し水分を控えて固めに作ってみたんですよね。それが好評で、フーチバージューシーという名で店の定番料理になったというわけです」。以来、そんな店の定番は沖縄の郷土料理として定番となり、多くの人たちから愛されるようになる。「ここは港に近い場所にありますので、最初は仲仕さんやタクシーの運転手さんなどが食べに来て下さいました。そうして口コミで広がり、観光客の方も大勢見えるようになったんですよね」。
そう語る仲本さんは、戦争で夫とひめゆり学徒隊の仲間を失い、子どもを抱え必死に生活する中で、このフーチバージューシーを生み出し、以来、47年間一日も店を休まず、85歳になった今でも毎日厨房に立ち続けていると言う。「この年齢になっても働けるというのは、本当に幸せな事ですからね。これまで何度も岐路に立たされましたが、その度に神様が助けて下さったのか、不思議とアイディアが出てきて立ち直ることができました。一日一日、生かされているという感謝の気持ちで一杯です」。そんな仲本さんは、これまでの人生を振り返り、今が一番幸せだと言う。「もう本当に平坦ではありませんでしたよ。それはもう非常に良い時代もありましたけど、厳しい時代の方が長かったですね。それでも今では、孫が10名、ひ孫も10名いて、皆が健康です。そんな家族が今の私の支えですね。これまで、“いつかは幸せになってみたい、幸せになってみたい”と、私ながらに、ささやかな希望がありましたが、こうやって振り返ってみると、今がその幸せの時期じゃないか、私の幸せの瞬間じゃないかな〜と思っているところです」。厳しい時代も笑顔で乗り越え、日々に感謝しながら、一日も休むことなく、多くの人をその料理でもてなし続けてきた仲本さん…。そうして今が一番幸せだと語る仲本さんの作ったフーチバージューシーは、食べる人をも幸せにする優しい味がした。

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