東国原宮崎県知事の宣伝効果により、今や高級フルーツの代名詞となった完熟マンゴーの栽培農園「大久保マンゴー園」の黒木利男さん。約25年前に宮崎県で初めてマンゴーの栽培を始めた人物として知られる黒木さんの作る完熟マンゴーは、ブーム以前から「太陽の子」の愛称で、日本全国のリピーターに支持されている。「もともと私は野菜の栽培農家だったのですが、沖縄の知人の農園を見学に行った時に、どの野菜よりもマンゴーの美しさに魅了されて、マンゴーの栽培を決意したんです」。黒木さんはマンゴーと出合った瞬間の事を「たまらん!という感じですよ」と振り返る。しかし、一般的にマンゴーの栽培は難しいとされ、沖縄の知人からも「マンゴーだけには手を出すな」と釘をさされたとそうだ。「それでも諦めがつかなくて、台湾にいるマンゴー栽培の先生を何度も訪ねて教えて貰いました。それでも14〜15年は失敗の連続でしたね。今でも気を抜くと失敗する事がありますよ」。
気の遠くなるような年数を費やし、ようやくマンゴーの栽培に適した土壌作りに成功した黒木さんだが、それからはマンゴー以外の農業も一変したそうだ。「土壌作りの基本は、全ての農業に通じます。植物によって肥料の配合は多少変わりますが、葡萄を作るのも梨を作るのも柿を作るのも、全て基本は同じなんですよね。農業は化学と言いますが、まさにその方程式を、失敗を繰り返して手に入れた感じです」。しかし、その方程式は、やはり簡単に手に入るものではないらしい。「その方程式を教えてくれと言う人がいるんですが、私が言葉で説明しても駄目なんです。やはり自分で失敗しないと頭の中に残らないんですよね。よくあるマニュアルとは違い、失敗から培った自分の経験の上に成り立っている方程式ですから」。作るのが難しいと言われるマンゴーだけに、肥料や日光など、色々と考えてしまいそうだが、やはり基本となる土壌作りが一番大切。そして、そんなしっかりした基本の上に出来たマンゴーには、ブームなど関係ない。「この太陽の子は、東国原知事が宮崎県産完熟マンゴーを太陽の卵と名付ける以前から販売しています。マンゴーはただ甘ければ良い訳ではなく、やはり味も大切なんです。全国のリピーターが、太陽の子の味の良さを証明していますから、私はこのままの名前で良いと思っています」。黒木さんの言葉からは、誰よりも失敗を経験し、完熟マンゴーの栽培に取組んで来た元祖としての自信が伺えた。
| 前のページ |