「全国お国自慢鍋コロシアム」で、全国各地の名だたる名物鍋料理を抑えて日本一に輝いた、黒豚しゃぶしゃぶ料理「くろくま」。直系70センチもある鹿児島名物の熊襲鍋を使ったその料理は、その味もさることながら圧巻の一言。そんな「くろくま」を料理長ともに考案した橋本龍次郎社長室チーフは、「もともと、『九州館』という名前で営業していたんですが、『南州館』に名前を変えて20年目となる時に、何か記念になるものはないかと考え作った料理なんです」と教えてくれた。「このご時世、ホテルや旅館の世界で生き残る為には、綺麗な部屋を提供する、美味しい料理を提供するなど色んなポイントがあると思うんです。じゃあ、この『南州館』はと考えた時に、料理で勝負しようと思ったんですよ。ですから、この料理は『南州館』が生き残る術として生み出された訳です」。そんな橋本さんは、「鹿児島の人間は、地元に対する愛情が大きい」と言う。そして、そんな気持ちを育ててくれるのは、鹿児島の象徴とも言える大きな山だった。「桜島の見える風景っていうのは、鹿児島の人間の心の風景だと思うんですよね。メゲた時や自信が無い時には、桜島は凄くデカく見えるし、自分がウマくいって絶好調な時は、桜島が小っちゃく見えるんです。県外の人達が、鹿児島に来た時に『桜島は煙を吐てるけど、こんな所に住んでて大丈夫?』って言うんです。自然の偉大さとかを見慣れない人達が来たら、そう見えると思うんだけど、でも僕達にとっては煙吐いてても当たり前なんですよね。それって鹿児島の人独特の、悪く言えば適当なんだけど、良く言えば、おおらかだったり、豪快だったり、ダイナミックだったりする気風を育てていると思うんです。そして、そんな魅力を鹿児島に来た旅行の人達に伝えられたらな〜と思っています」。シンボルのような大自然は、そこに住んでいる人にとっては当たり前なのかも知れないけど、実はその根っこのところで、人柄や土地柄を育んでいるに違いない。それが他所から来た人によって気付かされるんだろう。橋本さんの話は、自分の根底に流れている自然が何なのか考えさせるものだった。
| 前のページ |