福岡市内各所でステンドグラス教室を開きながら、ステンドグラスのランプや装飾窓などを制作する「ガラス工房 ひまわり」の末積慶和さん。家業である末積金属額縁の美術部門「末積アート」を継ぎ、後にステンドグラス部門を開設。現在は抽象画や曲線を意識したようなクラシックなものではなく、シャープな直線のラインを重視しながらモダンな作風を展開。福岡市内のギャラリーなどで不定期に個展を開催している。「ステンドグラスというのは、いわゆる透過光の光なんですよね。光というのは、朝、昼、夜、そして、雨の日と天気の良い日、さらに四季によっても違います。僕は窓に入れるステンドグラスをたくさん作っているのですが、その時々で色が違って見えるわけですよね。ですから奥が深いというか面白いと思います」。そんなステンドグラスだが、その魅力は光による色の変化だけではない。「ステンドグラスというのは手作りのガラスですから、同じ品番でオーダーをしても、少しずつ違う色になるというか、全く同じ色というのは出ないんですよね。ですから同じデザインでも人それぞれ個性がありますから、全く違うモノに見えることもあります。生徒さんたちに、同じマニュアル本と同じ型紙を渡して制作させても、3人作れば3人ともイメージの違うものが出来上がりますので、そういうところも面白いですよね」。そんな不確定要素が多いからこそ面白いステンドグラス制作には、技術や経験以上に、イメージ力がモノを言う。「生徒さんたちには、例えば『葉っぱだからといって緑を使わなくても構いませんよ』と…ステンドグラスは具象というか、現物の色を忠実に表すものではありませんので、『ご自分がキレイと思う色を使って作りなさい』と、よく話しています。ですから、工程というよりも光を通すとどんな色になるのか…そういうイメージする力が大事だと思いますね。光を通した瞬間にイメージ通りだと、嬉しいものですからね」。そう語る末積さんの色選びには、あるポリシーがある。「色というのは、同系色でまとめると、見た人に落ち着きを感じさせます。その辺を上手に使われている方も結構いますが、逆に全然、関係ない色をポンと入れても良いわけですよね。ただし、同系色の色の中に、あまり奇抜な色を持ってきたくないという気持ちは、僕自身の中にあります。それはビックリさせるのが嫌というか、ステンドグラスというのは、光で人の気持ちを落ち着かせるという良さがありますから、その中に一つ強過ぎる色を入れてしまうと、折角の良さが消えてしまいますからね」。しっかりとした技術と経験に裏づけされたモノを作る人ほど、シンプルな方へと近寄っていく。小手先で注目を集めようとするのではなく、作品の持つ魅力の本質で勝負する末積さんの作るステンドグラスは、見る人の心を和ませる、優しく温かな光を放っていた。
| 前のページ |