福岡市内の飲食店を中心に、洋品店、美容室など、様々な空間をデザインする設計会社「パイロットプランニング」の空間プロデューサー・緒方和宏さん。「オーナーの想いを空間にちりばめる」と語る、緒方さんが手掛けた様々なスタイルの店は、その想いが洗練されたデザインとなって具現化されている。「オーナーの想いがなければ、その店は繁盛しないと思います。ですから、いくら予算的にゆとりがあっても、その想いが届かなければ断る場合もあります。お店には命が宿るものだと信じていますので、その人の人間くささが伝わって来ないと、デザインする時のアイディアも沸いてこないんですよね」。そんな緒方さんは、以前、有名飲食店の運営を任されていた経験を持ち、お店が出来上がってからも様々な形でバックアップしているそうだ。「自分の手掛けた店が完成したら終わりではなく、そこがスタートだと思っています。やはりオープンの時は、色々大変ですから出来ない事が一杯あるんです。それが1年経ち2年経ち、スタッフも熟練してきて、お客さんも付いて、金銭面的にも余裕が出てくると、じゃあ次はお客さんに還元していこうっていう事を考えるんです。例えば、今までギュウギュウにレイアウトしていた店内の席を5席減らして、ちょっと余裕を持たせようとか。そうやって最初は出来なかった理想の形に近づけていく事も僕の仕事だと思っています」。緒方さんは、完成して終わりにするのだったら、自分がデザインする意味がないと言う。「お店を運営した経験があるというのは、僕の強みですからね。そして、やはり自分が手掛けたお店が、お客さんから愛されているという姿が、僕の一番のコマーシャルになると思っています」。空間プロデューサーと言えば、店や中身をデザインし、オープンさせるまでが仕事という印象がある。ただ、緒方さんが言いたいのは、オープンするまでの仕事と、忘れがちだが、オープンしてからの仕事があると言う事だ。そちらの方が、客からのメッセージに気付かなければならないのが難しい。「作ったものに対しての評価は、ある程度簡単に出来ます。しかし、それはあくまでもスタートの形なんですよね。オーナーさんが持つ人生の目標にも、少しでも僕が加担出来たら0?これもう僕の仕事としては、嬉しい限りだと思っています」。そんな緒方さんは、空間の良し悪しの違いは「居心地の良し悪しではないでしょうか」と言う。「基準がないので難しいのですが、僕の作る空間は、お客さんは勿論ですが、スタッフにも心地よい空間である事を心掛けています」。
| 前のページ |