宮崎県西都市は穂北にある南方神社前で、明治27年から営業する老舗の鰻屋「うなぎの入船」。外はカリっと香ばしく、中は柔らかく鰻の旨みが凝縮された逸品に魅了され、九州各地から、一日におよそ1000人の客が訪れ、連日長蛇の列を作る人気店として知られている。三代目の横山邦夫さんは、「お客があってお店がある。そんなお客を長い時間、外で待たせるのは忍びない」と、数年前、待合室としてだけ使われる別の建物を建設したそうだ。そんな横山さんだが、人気店となった理由について、分析した事はないと言う。「私の代になって30年になりますけど、こうしたから人気になったっていう方程式はないんですよね。料理に対してもお客さんに対しても、月並みな言葉ですけど、誠意と言うのかな、誠実さと感謝の気持ちを、ずっと持ち続けてきたのが良かったのかな〜なんて思うぐらいです。だから大きな苦労と言うのは、自分自身ではあまり感じてないんですけどね。普段やっている事をやってきた結果、今があるような気がするんですけどね。しいて言えば、待合室作ったりとかね。これも本当にお客さんの為ですからね」。人気が出ると、その理由を分析する人と、分析しない人がいる。分析すれば、そこからさらに伸びる事もあるけど、変わってしまう事もある。分析せずに、ひたむきに仕事を続ける。そうして、いつまでもその良さが続いて行く。「ここは田舎じゃないですか。こんな所まで高速道路を使って九州各地の遠方からお客さんがやって来てくれる。やはり100%のサービスで答えなきゃ嘘ですよね。いつも真剣勝負です。」そんな横山さんの夢は、この場所にある古くなった建物を、和風でバリアフリーの空間に変身させる事だそうだ。これだけの人気店となっても支店を出す気持ちなどはないと言う。「ここは神社の前にあるじゃないですか。神様がついてるような気がするんですよね。この場所で110年やって来て、これからもこの場所に来て下さった方に、最高のサービスを提供したいですよね」。奢ることなく謙虚に語る横山さんの笑顔が印象的だった。
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