宮崎は小林市で、九州で唯一の籐の家具を制作する「橋之口籐工芸工房」の2代目、橋之口幹夫さん。その卓越した技術で、「現代の名工」にも選ばれた橋之口さんの作品は、実用性だけでなく芸術性も兼ね備えている。「小学生の頃から器用でしたね。今でも自分の作品は日本一だという自負を持っています」。そう豪語する橋之口さんだが、「作品の価値は自分ではなく、お客様が決める」と言う。そして、橋之口さんは、お客様を第一に考える、その理由を教えてくれた。「やはり、自分が苦労しているからですよ。今は、お陰様でこうなりましたけど、籐の家具は金額も金額だし、なかなか簡単に売れる物じゃないんです。良い作品を作るより、売ることの方が難しいんですよね。そうした売れない時期に、私は宮崎のお客様に育てられたんです」。橋之口さんは、今、そんな宮崎のお客様には恩返しをしているそうだ。「宮崎のお客様には、サービスをしています。でも、県外では値崩れするのでしていません。それは、やはり宮崎のお客様に恩返しなんです」。橋之口さんは、「材料も流通も全く宮崎には、縁は無い」と言っていた。ただ宮崎で始めたから…、ただ宮崎で育ててもらった作品だから…、徹底的に宮崎への恩を忘れない姿は、誠実の一言だ。そして、それは作品にも表れていた。
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