鹿児島県串木野。この場所は、かつてマグロ船の基地として栄え、日本で2番目のマグロ船の保有数を誇っていた。しかし、現在では、輸送コストなどの問題から、かつての賑わいを失い、過疎化が進んでいる。ここ串木野で、今や名物となった鮪ラーメンを生み出した「味工房 みその」の店主、勘場明さんは、このように話す。「どうしても大きな街に人が流れて行くという現状の中で、串木野の街おこしをしたかったんです。やはり串木野の名物と言えば、鮪のイメージが強いでしょ。昔、私自身も10年間程、鮪船に乗っていた経験があったものですから、鮪を使った名物料理を生み出そうと考えたんです」。そんな鮪ラーメンは、塩味のスープに、鮪の切り身を浮かべた、何とも不思議なモノだった。しかし、その味は少しも生臭くなく、いい意味で予想を裏切るものだった。そして、栄養価も高く、ヘルシーな鮪を使っている為、県外から訪れる女性ファンも多いそうだ。「やはり街おこしの意味もあったので、県外からも来て頂けるような商品にしたかったんですね。地域の醤油も使うんですけど、醤油は地域・地域で、味が変わるじゃないですか。ですから、塩味を中心にして、上品な味に仕上げたんです」。ラーメン一杯で街おこし…。考えつきそうな事だが、それを実現するのは、中々出来る事じゃない。鮪とラーメン…。合いそうで合わない素材を、勘場さんが工夫して生み出した、全く新しい味が、串木野の街を少しずつ元気にしている。「この鮪ラーメンが出来てから、去年、26年振りに鮪船が串木野で水揚げをしてくれましたし、今年もまた水揚げをしてくれました。それが、この鮪ラーメンを作って、一番嬉しかった事ですよね。夢が叶いました」。
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