匠の蔵~words of meister~の放送

あじさい菓房【スィーツ 長崎】 匠:保坂恵子さん
2014年08月30日(土)オンエア
長崎の風土が育んだフルーツでゼリーやチョコレート、ジャムやアイスなどのスィーツを製造・販売する『あじさい菓房』の代表、保坂恵子さん。『古くて新しい味』をモットーに、昔からある長崎の素材に現代の感性を加えた様々なヒット商品を生み出す。
「20数年前に主人を亡くし、子どもを2人養っていかなくてはならない状況の中で、自分で何か商売を始めて生きていくのか、実家へと戻るのか、そして、再婚するのかという3つの選択肢で悩んだのですが、もともとお菓子作りが好きだったものですから、この道に進もうと決意して平成3年に会社を設立しました」。そうして、『美味しければイイ』という発想で、お菓子作りを始めたという保坂さん。しかし、最初は様々な壁にブチ当たったという。
「家で食べるお菓子を作る時は、賞味期限を気にしなくても大丈夫ですが、商品を作るとなると、やはり味だけでなく日持ちさせる為の工夫も必要となりますよね。また、味を安定させる為には材料の配合比率などの数値を勉強しなくてはなりません。そうした様々なことを実戦の中で学んでいきました」。その後、地元のお土産屋さんに『あじさい菓房』の商品を置いてもらえることになり、徐々に事業を軌道に乗せていった保坂さんは、いまや長崎銘菓となった『茂木びわゼリー』や、東京ビジネス・サミットで大賞候補に選ばれた『長崎ザボン de ショコラ』など、様々なヒット商品を世に送り出すことに成功する。
「ウチが長崎の素材にこだわるようになったきっかけは、ある取引先の方の言葉なんですよね。その方は、『土産って土の産物と書くだろう』と。『ということは長崎以外の素材を仕入れてお菓子を作っても、それは本物の土産じゃないよ』と言われたんですよ。私はその言葉に『なるほどな〜』と思いまして。そう考えると長崎は非常に農産物に恵まれた土地なんですよね。中国から持ち込まれた『びわ』は長崎が生産量日本一です。『ザボン』は350年前にジャワから長崎に持ち込まれました。皇室に献上されたこともある『伊木力みかん』は長崎が発祥です。そして、長崎の一部の地域にしか自生していない『ゆうこう』という果物を加えて、お菓子を作ろうと決心したんですよ。果物といえば『苺』や『メロン』などメジャーなモノがたくさんありますが、それは長崎でなくても他所にもありますからね。私は長崎のモノでお菓子を作りたかったんです」。保坂さんは誰よりも、身近にある長崎の素材のファンなのだろう。だからこそ、そんな長崎の素材に新たな魅力を付け加え、さらに輝かせることに、日々、尽力する。
「よくいう言葉ですが、オンリーワンの商品ですよね。企業の規模を考えるとナンバーワンは無理ですから、ウチしか持っていないオンリーワンの商品を作ろうとしただけのコトなんですよね。県外の方が『長崎のモノって美味しいよね〜』とか、県内の方が『長崎のモノって懐かしいよね〜』とか思って下されば、それでイイと思っています」。そんな保坂さんは、今後は素材を加工するだけではなく、素材そのものを生産する農業の分野にも進出したいという。
「従業員みんなで汗水を垂らして栽培すると、素材に対する愛情がさらに深まると思いますからね。愛情たっぷりに育てた長崎の素材に新たな魅力を加え、長崎のお菓子はカステラだけではないよと、全国の人に知ってもらいたいと思っています」。

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