匠の蔵~words of meister~の放送

水野旅館【老舗旅館 佐賀】 匠:立花研一郎さん
2011年09月03日(土)オンエア
昭和28年創業の唐津の老舗旅館「水野旅館」の立花研一郎さん。東京で環境アセスメント関連の仕事をしていたが、料理長の退職を機に実家である「水野旅館」を継ぐ為、唐津へとUターン。唐津の豊かな食材を生かした料理に特化した旅館経営を実践する。「玄界灘の新鮮な海の幸や、佐賀牛に代表される山の幸も身近にある唐津は、本当に食材の宝庫です。ですから野菜などは有機栽培のモノにこだわり、魚介類も天然のモノのみを使用して、お客様をもてなしています」。約400年前に名護屋城から、唐津湾を望む当地に移築した武家屋敷門が客を迎える「水野旅館」の魅力は、唐津城と唐津湾を望む風光明媚なロケーションもさることながら、素朴な温かさのある唐津焼の器に盛られた、立花さんの提供する料理にある。「先代からは質を落とすな、価格を落とすなということを、よく言われました。価格競争に巻き込まれてしまうと、どうしても質を落とさずにはいられなくなりますよね。そうするとウチなどは常連さんも数多くいらっしゃいますので、そのような方々の期待を裏切ってしまうことになりますからね」。しかし、素材の良さだけに頼るのではなく、素材を生かした料理法や日本料理の基本である出汁へのこだわりなど、細かい仕事がされた「水野旅館」の料理は、価格以上の満足感を味あわせてくれる。「唐津は料理が発達しないと言われるのですが、それは、素材が良いので生で出した方が美味しいからなんですよね。関東の人の話を聞くと、刺身などはシメてから8時間程経った方が、身が柔らかくなって旨味が出て良いというようなことを言われますけども、ウチでは魚をシメてから、すぐ刺身にするんですよね。そうすると、歯応えのある身と、舌にのせた時に冷っとする味わいが心地よく、食べ飽きないんですよね。お客様には、次もまた、水野旅館で料理を味わってみたいと思って頂きたいですから、よそでは出来ない、唐津ならではの方法で料理を提供しています」。料理本に書かれているように、杓子定規に食べ方を決めるのではなく、それぞれの土地に、それぞれの食べ方があっていい。それが、立花さんが言うように、その土地まで、わざわざ足を運ぶ理由の一つとなるのだから。

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