匠の蔵~words of meister~の放送

田中鎌工業【鍛冶屋 長崎】 匠:田中勝人さん
2009年03月07日(土)オンエア
大村市松原地区に伝わる「松原手打刃物」を製作する「田中鎌工業」の四代目・田中勝人さん。「松原手打刃物」は、約500年前に平家の刀鍛冶が松原に逃れて来た事が始まりと言われ、戦前のピーク時には21もの鍛冶場が、その技を競い合っていたそうだ。「鍛冶には刀を作る刀鍛冶と、農具を作る農鍛冶の2種類があるのですが、ここ松原は、より繊細な技術が必要とされる刀鍛冶の技術を受け継いでいます。松原小学校の校歌にも『槌打つ響き』と、金槌を打つ音を描写した歌詞が残っていますので、その昔は、この地区一帯に鍛冶の音が響いていたのでしょうね」。そんな「松原刃物」に限らず日本の刃物は、強度を増す為に硬い鋼に柔らかい鉄をくっつけて作られる。最近は機械化が進み、大きなメーカーが、鋼と鉄を最初からくっつけた素材(複合鋼材)を基に作られる事が多いそうだが、田中さんは、今も頑固に昔ながらの手作りで刃物を製作する。「手作りだからといって値段が高い訳ではありませんので、効率だけを言えば、本当に効率の悪い事をしていると思います。しかし、それでも手作りにこだわる理由と言えば、それが誇りだからです。手作りですと、やはり自分が使いたい鋼が使えるし、その鋼の量も調節出来ますしね。そして、それは決して目に見えるこだわりではなく、お客様に使ってもらって、『よく切れる』と思って頂いた時に、初めて分かるこだわりだと思います」。刀鍛冶と言えば、精神鍛錬の例えにもされるような代表的な職人技の一つ。だからこそ、機械化されて良いものが出来る程、簡単なモノではない。やはり、人が心を込めてこそ切れるモノとなる。「“継続は力なり”と言いますが、『松原刃物』の歴史が500年も続いた理由というのは、重要な所は機械化せずに手作りを残していたからだと思います。そして、最低限、ここだけは機械にしても良いという所だけを機械化して残してくれたから今も残っていると思うんですよ」。そんな「田中鎌工業」では、今、製作姿勢そのままのイメージの『男の包丁』と名付けられた包丁を売り出し、大人気となっている。「昔は家にいる男性が包丁を研いで、1本の包丁を大事に使っていました。そんな古き良き日本的な光景を、男の人達に思い出して欲しいと願って作ったものなんですよね」。田中さんの言葉しかり、包丁から放たれる光しかり、本物のみが持つその輝きには圧倒される。

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