匠の蔵~words of meister~の放送

より藤 [老舗鮎問屋 熊本] 匠:頼藤浩さん
2008年03月08日(土)オンエア
富士川、最上川と並び、日本三大急流の一つに称される球磨川。その雄大で美しくも激しい流れの中に育った鮎を扱い、110年の歴史を数える熊本は八代の老舗鮎問屋「より藤」。現在では、定番の「焼鮎」「甘露煮」などの商品に加え、三代目・頼藤浩さんが考案した、「九州駅弁ランキング」で過去に2年連続1位に輝いた駅弁「鮎屋三代」でも、その名を知られている。「きっかけは九州新幹線の開通でした。そこで何か名物になるモノを開発しないかと市の方から相談されたんですよ。最初は、『清流球磨川せせらぎ弁当』という名前でスタートしました」。そんな頼藤さんは、「10人が食べて10人が美味い」と言うまで、様々な人にアンケート調査を行い、改良に改良を重ね、この「鮎屋三代」を完成させたそうだ。「私は以前、小料理屋で板前をしていたんですが、その時に、食べる人の気持ちを汲み取るコツを学びました。カウンター商売では、美味しい物は美味しいというお客さんの反応が直ぐに返って来る訳ですよ。そこでの経験から食べて貰った人の気持ちが分かるようになったという自信はあります」。そうやって様々な人の意見が集約されて完成した、この「鮎屋三代」。それには頼藤さんの料理に対する覚悟も込められていた。「小料理屋の他にも、何軒か飲食店を出店したんですが、最終的にやっぱり自分がしないと続かないなという事が分かりました。小さな店では、お客さんというのは料理に来るんじゃなくて人に来るもんなんです。ですから、この『鮎屋三代』という弁当は、自分ではなく、弁当(モノ)に来るようなものをという想いを込めて作ったんです。ですから、熊本の店を全て辞めて八代に帰って来て、この建物を新しく建てたんですけど、カウンターは作りませんでした。本当は好きなのに」。自分が何か食べに行くとして、アノ店は美味い不味い、高い安い、そういうのもあるが、よく通う店と言うのは、やっぱりその店の人に顔を見せに行くといった事がある。以前、小料理屋をやっていたにも関わらず、あえてそこを排除して、料理そのもので勝負するという気概が、「鮎屋三代」の味には表れている。「後10年もしたら、カウンター商売を再開しようと思っています。お客さんは、他の店もまわってらっしゃるから、『あそこのアレが美味しいよ』とか、『あれ食べてみたら』とか、『ああいうのを作ってみらんか』という風に、美味しい料理を知ってるんですよ。そして、そこに行って食べて真似をして作って…。何かそういうのは、物凄く楽しいんですよね」。

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