匠の蔵~words of meister~の放送

筒井時正玩具花火製造所【線香花火 福岡】 匠:筒井良太さん
2012年08月04日(土)オンエア
子供向け玩具花火の製造を続けて80年。現在は日本で3社しかない国産線香花火製造所でもある『筒井時正玩具花火製造所』の3代目、筒井良太さん。筒井さんは15年前、八女市にあった国内唯一の線香花火製造所が廃業するのを機に、その技術のすべてを継承。福岡県南部に位置する自然豊かなみやま市で伝統の光を守り続けている。「線香花火は今、99.9%が中国産なのですが、私たちは希少な存在の国産の線香花火を良い形で後世に残したいという思いから、とことん素材にこだわった線香花火を製造しています」。火薬は宮崎産の松煙、紙は八女市の手漉き和紙を使用、その和紙を草木染で染色し、職人の手によって一本一本丁寧により上げられる『筒井時正玩具花火製造所』の線香花火。蕾、牡丹、松葉、散り菊と、その燃え方ごとに名前があり、目まぐるしく表情を変え儚く消えゆく様は人の一生そのモノのよう。「点火とともに命が宿ったかのように酸素を吸い込みながら『蕾』が大きくなっていく状態を幼少期。パチパチと『牡丹』のように一つずつ力強い火花が散りだす状態を青年期。やがて勢いを増し『松葉』のように次々と火花が飛び出す状態を壮年期。そして、火花が一本一本、落ちていく『散り菊』の状態を老年期に例えます。そして、最後に火の玉が光を失った瞬間、線香花火の一生は幕を閉じるんです」。線香花火に使われる火薬は0.08グラム。わずか100分の1グラムの増減で、その燃え方が大きく左右されるという。「火薬を盛る作業が、最もシビアで、線香花火が繊細な花火だと言われる所以です。手練が作る線香花火は、途中で火の玉が落ちず、最後までキレイな火花を放ち続けるのですが、私たちはそうした付加価値を生み出す職人技で、中国産の線香花火に対抗していくしかないと思っています。価格で勝負してもまったく太刀打ち出来ませんからね」。しかし、筒井さんは、付加価値以外にも中国産の線香花火に対抗する手段があるという。「小さい頃の線香花火の思い出というのは、日本人であれば誰もが持っているモノなんですよね。それも鮮明に覚えているという方が多いんです。ですから、私たちは線香花火は人生に例えられるとか、日本の線香花火はこうして作られ、その裏にはこんな職人技が詰まっているとか、その魅力を言葉にして、もっと伝えていかなければならないと思っています。そうして共感して頂ければ、実際に線香花火をするのが、もっと楽しくなるでしょうし、なにより、日本の線香花火の素晴らしさを知ってもらえますからね」。男は黙ってなんて、もう古い。その魅力をちゃんと言葉でも説明し、さらに今後は体験イベントも開催したいと願う筒井さんの夢は、線香花火がいつまでも日本人の記憶の中にあり続けること。「やっぱり子どもたちが花火をしなければ、今後、さらにその子どもたちは花火をしなくなりますよね。やっぱり、そういった花火離れを解消する為には、体験してもらうということが一番だと思います。知って体験しないことには、その文化は止まってしまいますからね」。

| 前のページ |


| 前のページ |