日本と中国の文化が交差する沖縄。琉球文化の息吹が色濃く残る首里城近くの閑静な住宅街にある琉球宮廷料理店「赤田風」の城間健さん。琉球料理の名店「美栄」のメインシェフを17年間務め、現在の場所に店を開いた城間さんの作る、上品で洗練された琉球宮廷料理は「赤田風の料理を食わずして琉球料理を語るべからず」と言わしめるほどの完成度を誇る。61歳の年齢に違わず、貫禄のある佇まいで優しく客を迎え入れる城間さん。しかし、その料理に向かう姿勢には一切の妥協がない。「料理と言うのは点数をつけるとすれば、60点台くらいの料理が一番大勢の人に食べて頂けると思います。それより上の70点、80点、90点を目指そうとすれば、人間はピラミッド型になっているので、やはり食べてくれる対象が狭まってくるものなんです。しかし、それでもやはり私は常に100点を目指して料理を作っています。沖縄が馬鹿にされないように...沖縄にはこんなに素晴らしい料理があるのだと伝える為にですね」。沖縄の食文化の象徴として今に受継がれてきた琉球宮廷料理。ただ美味しいからだけではない...城間さんは、琉球文化の継承に熱い想いを持っている。「地理的、歴史的な背景から中国と日本の両方の食文化を融合した琉球料理は、一国の食文化に値する程の多様性を持っています。そんな沖縄の食文化の魅力を伝えるのが私の使命だと思っています」。そんな城間さんの徹底した姿勢は、その料理の食材にも表れている。「沖縄の人間は魚嫌いが多く、魚はすり身の蒲鉾しか使いませんでした。ですから私の料理にも魚はありません。琉球宮廷料理を謳うからには、昔は使われなかった食材を出しても意味がありませんからね」。大城さんは、現在、一人でお店を切り盛りしている為、大勢の客を相手にするのは難しい。しかし、訪れた人には常に全力でもてなしてくれる。「一人で店を切り盛りしている理由は、もちろん料理人になった以上、自分の味を楽しんで頂きたいからです。また、美味しい料理は気力と体力が充実していなければ出来ません。人数が増えれば増える程、全員の気力と体力が充実するのかどうかのリスクが増えますが、一人でしたら自分自身でコントロール出来ますからね」。自らの味を信じ、自らが作り、自らが提供する。そして、自らがその全てに責任を持つ。とろけるようなラフテーや吸い物など、城間さんの手間隙がかけられた繊細な琉球宮廷料理からは、清々しい覚悟まで味わえる。
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