匠の蔵~words of meister~の放送

大島振興協会 宮崎漆器工房 [宮崎 漆器] 匠:桑村義一さん
2007年08月18日(土)オンエア
14世紀後半、琉球王国の時代に始まった漆器の技が、戦後、宮崎に伝わり、伝統工芸品としての指定を受けるまで成長した宮崎漆器。宮崎のミズメザクラ、ケヤキ、イスを用いた木地に何度も漆を塗っては磨くという工程を経て仕上げられた鮮やかな朱色の器に、堆錦(ついきん)と呼ばれる技術で加飾された紋様が美しく、お盆や茶托、硯箱、盛り鉢などが主に製造されている。その宮崎漆器の技術を受け継ぐ職人として、宮崎県伝統工芸士に認定された大島振興協会の桑村義一さんは、およそ30年間、この宮崎漆器の漆の上塗りを担当している。「上塗りの技術は、教えてもらうだけでは分からないんですよね。試行錯誤を重ねて、自分流の塗り方、乾かし方を身に付けながら、いい案配に仕上げていかなくてはなりません。こうするべきとか、ああするべきとか言うマニュアルはないんですよ。手法ではなく、ただ綺麗に仕上げるという結果がすべてなんです。そして、見た目が綺麗な漆器は、口に当てた感触も違うんですよね。その違いは見た目だけではない部分にも表れます」。そんな桑原さんでも、「30年間休まずに作ってきた作品の中には、自分自身、納得出来なかった仕事もある」と言う。「これは自分自身がイマイチって思うだけで、製品としては別に可笑しい所は無い訳ですよね。気持ちの問題だけなんです。ただ、やはりこだわりみたいなものはあります。そのこだわりとは、『俺達作る人は数を作る。でも買う人はその中の1枚を求めて買う』という気持ちですよね」。一目で人を魅了するような圧倒的な商品なんて、稀でしかない。どんな作り手にも、これ以下は許せないという一線がある。だから、その一線をいかに高いトコに置いておくのかで、商品には審判が下される。それが長い年月をかけて、買うならアソコのものが良いらしいから、どうせ買うならアソコになって、アソコまで買いに行こうになる。そんな桑村さんは、伝統工芸士という肩書きについても「伝統工芸士に認定されたからと言っても何も変わっていません。逆に変わってしまったら可笑しいですよね。私は伝統工芸士になる前もなってからも、宮崎漆器を綺麗に仕上げるという気持ちを持って仕事に取り組んでいます」と言う。「今後はアクセサリーなど新しい分野にも挑戦してみたい」と言う桑村さん。宮崎漆器はこれかからも伝統工芸品としてだけではない光を放つ事だろう。

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