大分は、湯の街・別府。この場所で、60年以上、今尚、竹職人としての道を歩み続けている、渡邉勝竹斎こと渡邉昭雄さん。国の伝統工芸士にも認定された名工である、渡邉さんが編み上げた作品は、日本のみならず、アメリカのギャラリーや美術館でも絶賛されているそうだ。そして、恐ろしいほど細かく、精巧な仕事がしてある。「手を使う仕事は、繰り返す事が大事なんですよ。そうすると手が自然に覚えるんです。」そんな渡邉さんは、伝統的な作品である竹篭や小物だけに限らず、現代的なデザインを取り入れた、手提げカバンや書類ケースなども制作していた。そして、その作品たちは、渡邉さんが考える、伝統というものを表現しているものでもあった。「伝統って言葉はね、伝は伝えるだけど、統はまとめるって意味があるでしょ。だから、何にまとめるかって言うと、今の時代に合ったものにまとめると。売れない時に一生懸命考えたんだけれど、時代に合ったようなものを作っていかなければいけないと気付いたんです。結局ね、自分勝手に作りたいで作っとるんじゃね、ちょっとお客さんとズレが出てくる事があるんですよ。私は幸いにお客さんが教えてくれる。それを作ってると、こりゃ良いなって事になるんですよね」。来年80歳を迎えるという渡邉さんだが、今でも世の中のデザインにアンテナを張り続けている。時代に合わせてまとめていこうという、その感性とバイタリティーには圧倒されたのであった。
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