鹿児島は鹿屋市で、「シャポーン鹿児島鶏」を飼育する「龍治農場」の上山龍治さん。上山さんは大隈半島の豊かな自然に恵まれた農場で、約1400羽の「シャポーン鹿児島鶏」を放し飼いで飼育している。「高度な技術で雄鶏を去勢し、長期間放し飼いで育てた鶏の事をシャポーン鶏と呼びます。一般的なブロイラーは生後約50日で出荷されますが、このシャポーン鶏は10ヶ月以上経って出荷されるので、手間隙がかかり日本の養鶏では、なかなか実現しませんでした」。肉特有の臭味がなく、鶏肉本来の自然な甘さがあるなど、その味と希少性から、フランスでは高級食材として珍重されている「シャポーン鶏」だが、上山さんは、鹿児島で飼育するにあたり、すべて地元の自然素材を使った手作りの餌で飼育しているそうだ。「鶏は土の中の菌も餌として食べるのですが、やはり鹿児島の餌で育った鶏は、フランスとは違い鹿児島の味として育ちますからね」。食べる物で人間は作られると言うが、それは鶏も同じ。日本人には日本の餌で育った鶏の味が合うのだろう。「ここ大隈半島には、餌となる自然の素材が豊富にあるんですよね。それを活かし、自分達で加工して餌にして食べさせる。そして、その堆肥を還元させるというのは、理想の循環型農業だと思うんです。ですからウチは社会資本型ではなく自然資本型の農業なんです。勿論、餌を買った方が楽ですが、結局、生き物は食べ物と飲み物で構成されている訳ですからね。大変と言えば大変ですけど、ただ当たり前の事をやっているだけです」。その土地のものを手間隙かけて循環させるというのは、スマートな社会というか仕事と言える。そして、そんな風に育てられた鶏は、勿論、雑味のない素直な味になる。
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