匠の蔵~words of meister~の放送

鈴田工房 [佐賀 鍋島更紗] 匠:鈴田滋人さん
2006年09月02日(土)オンエア
佐賀県は鹿島市ある、「鍋島更紗」の工房「鈴田工房」の鈴田滋人さん。この「鍋島更紗」の「更紗」とは、着物などの木綿に模様を染めることを言う。そして、「鍋島更紗」は、唯一、「木版」と「型紙」を併用する技法を発展させたもので、かつては鍋島藩の御用達や注文品として用いられた、格式高い伝統を持っているそうだ。しかし、鈴田さんは、「昔のものを、今再現するだけでは意味がないと思うんです。昔のものを今にどう取り入れるかが大事だと思います。」と、今に生きる「更紗」を作り続けている。そして、自然観察から生まれるというデザインの斬新さ、色調の美しさなど、その独自の作風が評価されている鈴田さんは、人が何かを表現する上で、最も大切なことを教えてくれた。「マジックを子供に見せますよね。そして、暫くしてタネを明かすと、こんなもんだったのかと思うんです。けど、その後、それを演じるようになるんですよ。自分が得た感動を人に伝えようとするんです。これが、私は、まさに表現ではないかな〜と思うんです。私の場合は、自然観察をして、スケッチをするのですが、それは、ある意味で、マジックのタネ探しをやっている訳ですよ。何となくこの木は面白いな〜とか、この群生している植物は面白いな〜と思った時に、そこで、何で自分が、そこで面白いと思ったんだろうっていう、タネ探しをしていく訳ですね」。しかし、そのタネは必ず見つかる訳ではないそうだ。「私達は何か、ただ普段は漠然と見ているんですけど、やっぱり表現となると、それを具体的に見ていかなきゃいけないんですよね。そこを探してデザインするのが、ある意味、一番大変で面白いとこなんですよね。それが正しいとか、間違っているとかいう問題じゃないんですよ。自分がそこで、そう思えたかどうかが大切なんです。人に伝えるって事は、ある意味、非常に難しい事なんですけど、その切り口をキチンと自分の中で意識して、自分はこう思いますよって言った時に、それが人に伝わったとしたら、非常に嬉しいですね」。えらい人が「良いデザインだ」と言ったから、「良い」のではない。何かを表現する、何かを提案する場合、誰かがではなく、自分がどう思ったのか、どう感じたのか…という想いがないと人には伝わらない。鈴田さんの作品には、鈴田さん自身の感性のすべてが注ぎ込まれていた。

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